2013年12月9日月曜日

「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」という問いの背景を資本主義経済の構造から説明した一冊

僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか? (星海社新書)

「なぜ、わたしたちの働き方はこんなにもしんどいのか?」
「なぜ、社会や経済は十分豊かになったのに、働き方は豊かにならないのか?」
「どうすれば、「しんどい働き方」から抜け出せるのか?」

という問いに対する答えを、仕事術のようなテクニック的な話ではなく、資本主義経済の構造・仕組みを背景に説明しようとしている本。「資本論」と「金持ち父さん貧乏父さん」の話が下敷きになっている。

また、冒頭では「給料」に関する話がある。

「あなたは、自分がもらっている「給料の金額」に満足していますか?」
「その金額は、あなたが行っている仕事内容に対して「妥当」な額ですか?」

と聞くと、「給料が少ない!」「自分はもっともらってもいいはず」と感じる方も多いのではないかと述べられている。一方、そうした人で以下の質問にすぐに答えられる人はあまりいないでしょうとも述べられている。

「あなたは、自分の「給料の金額」がどうやって決まっているのか、ご存知ですか?」
「給与明細を見て、なぜその金額をもらっているのか、「論理的に説明」できますか?」
「「もっともらってもいいはず」と感じる方は、では論理的にいくらが「正しい金額」だと思いますか?」

こうした問いかけをしながら、そもそも「給料」はどう決まっているのかという話が展開される。本書での答えは「必要経費方式」。要するに、生活に必要な分のお金を給料としてもらう。

これとは別の「利益分け前方式」の会社もあってそうした会社では稼いだ分に連動してもらえるお金が決まってくるけど、多くの会社の場合は必要経費方式で「どんなに努力して会社に利益をもたらしても、基本的に給料は変わらない」(p29)

もちろん、昨今の成果主義の話とかは触れられていて、そうしたところで多少のプラスアルファの変動はあるものの、ここで扱われているのはベースの考え方がどうなっているかという話。個人事業主や経営者ならまた別かもしれんけど、会社員についてはそういう考え方ということ。

そして、給料の水準が高い人は、なんだかんだ生活水準も上げなくてはならないようになっており、そうすると、年収が多い人は多い人なりにしんどいと感じている。

これと関連して、資本論での「使用価値」と「価値」の用語がつかわれている。ここでいう「使用価値」の方は、一般的に価値と言った時にイメージするような内容で、使ってみての意味や役立ち度合いみたいな意味。それに対して「価値」の方は一般的なイメージと違っていて、それを作るのにどれくらい手間がかかったかというもの。

世の中のモノの値段や給料はこの「価値」の方を基準点として決められている。給料は、労働力を再生産するのに必要な分がもらえているということであり、給料が高いというのは再生産のためのコストが高い(例:衣食住のクオリティを上げておかないと激務に耐えられない)。だから、いくら給料が上がるような仕事についても皆全体的になんとなくしんどいというとかそういう話が展開されている。

このあたりの話と関連して以下のような話が紹介されていたけど、これは果たしてどうなんやろなー…

■がんばって成長しても、得られるものは変わらない
「かつて、このような話を聞いたことがあります。

 生存競争が激しい熱帯雨林に生息している樹木は、どの木も、隣の木よりも多くの光を得ようと上へ上へと伸びる。
 ところが、それでは「影」に隠れてしまう木が出てくる。その影に隠れた木々は、太陽の光を得ようと、他の木と同じ高さまで伸びようとする。もしくは、いちばん高く伸びて、光を独り占めしようとする。
 すべての木が同様のことを考えているため、熱帯雨林の木々は非常に背が高い。
 ところが、ふとその熱帯雨林を俯瞰して全体を見渡してみると、光を得ているのは最上部の葉っぱだけだということに気がつく。一生懸命背伸びして、高いところにたどりつこうとしているが、日が当たっているのはごく一部なのである。
 そして、より大事なことは、すべての木の背が低くても「各樹木が得られる光の量は同じ」ということだ。
 自分だけ太陽の光を得ようと競い合って伸びても、誰も何も考えず「当初」の高さでとどまっていても、「得られるもの」は同じだったのである。
 熱帯雨林に生息している樹木は、なんと無駄なことをしているのだろうか――。

 この指摘は、資本主義経済に生きるわたしたちの姿をよく表していると言えるのではな
いでしょうか?
ほとんどの人は、より多くの光を得るために「他人よりも上」に行こうとします。ところが、他人も同じことを考えており、みんなとりあえず上を目指して生きています。
 その結果、熱帯雨林の木々と同じように、最終的に得られるものは「競い合う前となんら変わらない」という状況に陥っているのです。
 なんとも皮肉な結果です。
 では、競い合う前とまったく同じ状況なのかというと、そうではありません。
熱帯雨林の例でいえば、木々が太陽の光を求めて競い合った結果、「得られるもの(光の量)」は競い合う前と変わりません。
 では、何が変わったのか?
 そう、競い合う前に比べて、幹が異常に長くなってしまってぃるのです。
 その大きく伸びた幹を維持するためには、より大きなエネルギーを必要とします。
 熱帯雨林の木々と同じように、わたしたちもゃみくもに「他人よりも上」を目指すと、得られる「光の量」は変わらない一方で、競い合うだけ体力や気力、そして時間を失います」
(p137-140)

じゃあどうするかというところが最後の方で述べられているけど、そっちの方は結局は考え方を変えましょうみたいな話。「世間相場よりストレスを感じない仕事」(p228)を見つけて選ぶことで、相対的にしんどくないとか、あとは、長期的に活きる資産を蓄積してそれを活用しようとかそういう話。

このへんはそんなに目新しいことは言ってないかなーと思ったけど、前半の方の話はなかなかユニークやなーと思った。

さらっと聞くと、ん?ってなるし、「がんばって成長しても、得られるものは変わらない」って言われちゃうとなー…とも思うし、いろいろ留保が必要そうな主張ではあると思うけど、1つの見方としては面白いんやないかなーとも思った一冊やった。


2013年12月2日月曜日

「水族館に奇跡が起きる7つのヒミツ」は「とりわけ険しいわけでもない」けれども当たり前のことを当たり前にやることの大事さを感じさせてくれる一冊

水族館に奇跡が起きる7つのヒミツ―水族館プロデューサー中村元の集客倍増の仕掛け

新江ノ島水族館、池袋のサンシャイン水族館、山の水族館などのプロデュースを手がけた方がどのような発想で成功につなげているか、取材を元に整理している本。もともと魚も水族館もそんなに好きではないと公言している方だけに、なぜ水族館の価値を発揮させられるようなことができるのかとても興味深い内容。

テーマ的には水族館を核にした地域おこしの話にもつながっていて、その発想の広がりや行動力は先日読んだ「ローマ法王に米を食べさせた男」の水族館版っていう感じがした。

特に北海道の山の水族館の事例はすごくて、バスと電車で行くと待ち時間も含めて空港から4時間半(レンタカーでも空港から1時間半)かかる場所にあって、もともとは地元の人しか知らないような場所だったのを、低予算でリニューアルをして1年間の入館者数が15倍の30万人に!

その背景にある考え方の1つが顧客視点。これだけさらっと書くと何を当たり前のことを…っていう感じがするけど、読んでいくとなるほどなと思える。

例えば、水族館はどういう場所であるべきかということを考えたときに、運営者側は教育や種の保存、調査・研究といった社会教育施設として考えている。レクリエーション的な要素も考慮されているとはいえ「水族館は教育施設でなければならない」という考えが根強く、これがお客さんが求めるものとのズレを生じさせているという。

それをあらわしているのが次の言葉。

「多くの水族館はマーケティングを真剣にやってこなかったんです。いまだに子どもが家族を連れてくると思ってるからチャンチャラおかしい。小さな子どもは水族館よりも動物園に行きたがるもので、水族館に家族を連れてくるなんてことはないです」
(p68)

そこでターゲットをしっかり定め、その人たちが何を求めているかを考え、そこにあわせて展示内容も作っていく。サンシャイン水族館の場合、子供より大人が大事なターゲットと定め、大人のための「天空のオアシス」というコンセプトで癒しやくつろぎの空間を作る。

山の水族館では、北海道の自然を感じられるようなコンセプトにし、それが一言で分かるコンセプトコピーにまとめる。山の水族館のコンセプトは「日本一と世界初がある 北の大地の水族館」。そして、コンセプトはそれぞれの場所でしか得られないものに濃縮する。このあたりのコンセプトの明確化は星野リゾートの話とも通じるなーとも思った。

これに関して1つ印象に残ったのが次の話。

「ただ、なんでもやればいいというわけではないよ。大きな水族館ではマネできない仕掛けを考えると同時に、他の水族館では勝てない方向にもっていくことです。たとえ、相手がボブ・サップのような巨漢でも、指相撲なら勝てるかもしれないじゃないですか」(p245)

こうした形でそこでしか得られないものをコンセプトにして明確にすることでマスコミにもとりあげられやすくなる。記事にしたり、レポーターが中継する時に、「ここはまさに「天空のオアシス」です!」とか、「日本一の〇〇がある水族館です!」といった形で取材者側もポイントが明確で扱いやすくなる。

プロモーションはかなり力を入れていて、鳥羽水族館で働かれていた時代に、東京のテレビ局に鳥羽水族館の名前をアピールするために、放送局のある路線に絞って中吊り広告に鳥羽水族館の広告を出して印象を焼き付けるようなことをしたりしている。

こうした予算が無いなら無いで、山の水族館のように予算が無かった場合は、「日本一の貧乏水族館」がリニューアルによってどう変わったかということをアピールし続ける。しかも、メディアで紹介される時を見据えて、リニューアルの途中から実験や作業の様子を撮っておいて資料VTRとして使えるようにしてあるという。

正直ここまでやるとは…と思って、見方によってはあざといと見えるかも知らんなーとも思ったけど、逆にここまで徹底してやっているからこそ、予算とかリソースが無い中でも成功につなげていけるんやろうなーとも思った。

また、マスコミとか派手なことだけではなくて、お客さんの後をついていってどういう風に展示を見ているか地道な行動調査をしたり、1つ1つの展示内容や解説文をどう見てもらえるものにしていくか練っていったりという作業を繰り返して改善を重ねていることがバックグラウンドにはある。

他にも、「オペラ座の怪人」のミュージカルを見に行った時のセットの効果を水族館の展示のプロデュースに生かしたりなど、発想の広がりがすごくて、いろんなことを活かして企画や展示に活かしている。

展示内容に関しては常識を疑うということも重要としていて、その良い例が目玉の展示の配置。運営者側の視点だと、最後に目玉をもってきて、それまでのものも全部見て欲しいと考える。しかし、先がどうなっているか分かりづらい水族化でこれをやってしまうと、目玉にたどりつくまでにお客さんは疲れてしまう。そこで、あえて最初に目玉を持ってくることでお客さんの満足度も上がるという話。これは目から鱗やった。

予算が無い、人も足りない…と嘆くのは簡単やけど、ここまで徹底的に考えぬいて行動しきれば制約条件を超えたり逆にそれをプラスに変えていけるんやなーと改めて感じさせてくれる一冊やった。

1つ特に印象に残ったのが以下の一節。

「弱者が進化する上で大切なことを、中村は次のように語る。
「捨てること。イルカの芯かと同じです」
元来、イルカなど鯨の仲間は水中で生活していたわけではなく、陸上で暮らしていた。
しかし、陸上では弱者だったために、水中生活者へと進化していった経緯がある。陸を捨てて、海で生活することを選んだ時に、速く泳ぐために足をなくすことにしたのだ。
おもいきった選択があったからこそ、鯨類は今や多様な種類に繁栄して海洋の覇者となっている。もしも、彼らが陸上の生活に未練たらたらで、陸上を歩けて水中も泳げることを選んでいたとしたら、今の繁栄はなかっただろう。
この選択ができるかどうかが、進化できるか否かの分かれ目なのである。捨てることもまた進化の大切な考え方なのだ」(p240)

あとがきで、中村さんは次のように述べている。

「私の水族館プロデューサーとしての仕事は、新しいものをつくることではなく、利用者のための新しい常識をつくる仕事だ。スタッフと共に利用者のことを考え、古い常識を覆し新しい常識による展示を開発していく。ご想像のとおりその道は平坦ではないがとりわけ険しいわけでもない」(p254)

このメッセージは他の仕事にも通じると思う。

・無理だと思った時でも、何か別の方法を考えること。
・常識だと思っていたことや、思い込んでいたことを疑うこと。
・カスタマーズ起点で考えること。
(p250)

いずれも、これらを見るだけだとうん、そうやよなー、当たり前やよなーってことやけど、それをいかに自分の仕事や生活の中で実践していけるかが大事でかつ難しい。でもそれも「とりわけ険しいわけでもない」と思うし、その1つのモデルを見せてくれる一冊やった。

2013年11月25日月曜日

「きのこ検定公式テキスト」はきのこ好きはもちろん面白いと思うけど、そうでなくても結構楽しめる一冊

きのこ検定公式テキスト

著者が「ホクトきのこ総合研究所」ということもあり、若干ホクトの宣伝的な内容も入っているけど、全体的にはきのこについて、生物学的な話から文化的な話までいろんな角度から知ることができて面白かった。

「いわゆる「きのこ」と聞いたときにイメージする目に見える部分は、じつはきのこの子実体で、きのこの本体ではありません。地中や木材の中に広がる禁止が本体であり、子実体は子孫となる胞子を作る、植物でいう花のような役割を果たしています」(p10)

学問的には当たり前なのかも知らんけど、知らんくて軽くひったまがった。

その他にもきのこにまつわることわざとかがあって、ロシアではきのこがよく食べられるらしく(これも知らんかったけど)、ロシアのことわざが紹介されとった。

その1つが「きのこと名乗ったからには籠に入れ」というもので、最後まで責任をとれっていう意味らしい。その他にも「きのこ入りピローグを食べてもぺらぺらおしゃべりするな」みたいなにもあるらしく、これはご馳走されても余計なことをしゃべるなという意味。なかなかこのへんも面白い。

こういういろんな参考情報が序盤にあって、中盤はきのこ図鑑。カラー写真入りでこれを眺めているだけでも結構楽しい。日本でいうところのマッシュルームはツクリタケっていうとかも知らんかった。なんかイメージと違うけど…w

最後の方には検定試験の例題もついている。問題としては、こんな感じ。

きのこが属する生物群はどれか
1.動物 2.植物 3.菌類 4.原生生物

このあたりはなんとなく分かるけど、もうこの次のあたりからは無理。

ハラタケ目の各部のうち、幼菌時の外皮膜のなごりでないものはどれか。
1.ツバ 2.イボ 3.ツボ 4.ヒダ

このへんもなかなかにマニアック

次の作品のうち、きのこが登場しないものはどれか。
1.「わらべうたのほん」 2.「フレデリック」 3.「不思議の国のアリス」 4.「妖精の国で」

きのこ好きはもちろん面白いと思うけど、そうでなくても結構楽しめる一冊やないかなーと思った。

2013年11月18日月曜日

「イライラを引きずらない!「怒り」の上手な伝え方」を考えることは、結局は自分を知るっていうことが鍵だということが分かる一冊

「怒り」の上手な伝え方

タイトル通り、「怒り」について扱った本。スタンスとしては、腹が立つのは自然なことで怒ってもいいけど、そこで湧いてきた「怒りの感情」にどう対処するかというところを重視。

「アサーティブ」という言葉で表現されているけど、「人を傷つけるわけでもなく、自分が我慢するわけでもない怒り方」(p41)で、建設的に素直に表現するということ。

アサーティブに伝えるために気をつけるポイントとしては次の3点。
1)「行動」「状況」にフォーカスする
2)「本当の気持ち」を言葉にする
3)「何がどう変わってほしいか」を伝える
(p89)

例としてはこんな感じ。

「理由を示されないまま、結論だけ言われることがイヤなの。ちゃんと理由を説明してほしい」
「相談がなかったことに腹が立ったの。これからは決める前に、私にひと言話してほしい」
「とても不愉快だわ。そうじゃなくて、思ったことは私に直接話してほしい」
(p95)

考え方の部分はよく言われていることでもあるけど、相手の事情を考えてみるとか、変えられることにフォーカスするとか、これで世界が終わるわけでもないと考えるとか、怒りの対象は「相手」ではなく「問題」であると考えるとか。

相手への対処の仕方もあるけど、まずは自分自身を知るっていうことが大事なんやなーと思った。本書でも、まず冒頭に自分がどういう「怒り方のクセ」を持っているのかという診断がついている(すぐ感情的になるタイプ、イヤミな感じになったりその場では表現せずに後々復讐するタイプ、怒りを抑えて貯めこんでしまうタイプ等)。

また、後ろの方の章では丸々一章使って「批判されたときの対処法」が整理されている。これもテクニックとしての言葉遣いとか間の取り方とかはあるけど、大事なのは自分の「心の急所」とか、自分の感じ方を知ること。

怒ったりイライラしている時に、「なぜ、腹を立てているのか」を自問するという話があった。例えばこんな感じ。

・「今日イライラしている」のは?  - 疲れているから
・「上司の言葉にムッとした」のは? - 突然でショックだったから
・「後輩に怒っている」 のは? 期待を裏切られてガツカリしたから
・「パートナーの言葉にカテンときた」のは? - その言葉に傷ついたから
・「子どもの行動が頭にきた」のは? - 心配したから
・「思わず言い返した」のは? - 否定されたようで悔しかったから
(p79-80)

怒ってる時にそんな余裕はないよなーと思ったけど、確かに意外になんで腹を立てているのかって自分でもあんまり見えてない時あるよなーと思った。

あと、1つ印象に残ったのが以下の話。

■過去は過去、今を生きるために
「誰かに猛烈に腹を立てているとき、ふと気づくと、過去の別の人のことを思い出していたとか、同じような怒りのパターンを身近な関係でくり返しているな、と気づいたときは、こう自分に問いかけてみましょう。
「自分が怒っている対象は、本当にこの人なのだろうか。過去の問題をくり返しているのではないだろうか」 と。
実は、目の前にいる上司に父親の影を重ねていたり、先輩が以前のいじめっ子のように感じられて、その人の行動や振る舞いに過剰に反応している、という場合もあるのです。
過去、怒ることができなかった無力感を、今の関係の中で癒そうとしても、やっぱりうまくいきません。
今の怒りが、過去に傷ついた経験がもとになっていて、その傷をどうしても癒すことはできないと感じる人や、怒りがいったん吹き出すと止まらないという人は専門家に相談して、過去の傷を癒す試みをされることをお勧めします」
(p78-79)

専門家に相談するまでかどうかは別としても、なんか分からないけど怒ってしまったというような時って、無意識になんかの過去の経験に触れて怒りが吹き出しているっていうこともあるのかもなーと思った。やっぱ自分を知るっていうことが1つキーなんやなーと思った一冊やった。

2013年8月12日月曜日

「知れば知るほどおもしろい 琉球王朝のすべて」は現代日本にも示唆を与えてくれる一冊

知れば知るほどおもしろい 琉球王朝のすべて  

NHKのBSドラマ「テンペスト」の時代考証を担当された方と、沖縄出身で沖縄国際大学を卒業して那覇市の歴史博物館の学芸員を務められている若い研究者の方が書かれた、琉球史についての本。

最近「テンペスト」はじめ、琉球王国を舞台にした小説やドラマが人気になっているにもかかわらず、フィクションではない琉球史(特に近世琉球)を紹介した入門書がまだまだ少ないので、そこをカバーするという面もある。

琉球の歴史の面白さをもっと楽しんでもらえるようにという想いで書かれているので、歴史の専門書のような小難しい内容ではなく、雑誌とかのコラムのような感覚でさらっと楽しく読める。「現代を生きる読者が納得・理解し、共有できるよう」(p1)という想いのもの書かれたもの。「テンペスト」に出てきた話に関するトピックも多くて、あわせて読むとイメージがしやすくなってより楽しめると思う。

著者の一人の方は1984年生まれということで自分とほぼ同年代ということもあるけど、文章も若い感覚があるような感じ。例も現代的なものをいろいろと比喩に出していてイメージしやすい。この方は、もう一人の著者の方から、「柔軟な思考、感性」(p1)を持っていると見込まれて共同執筆を依頼されたとのこと。その部分が内容にも活きていると思う。

もちろん、細かいところや正確さと言うところでは専門家からしたらツッコミどころがあるんやろうけど、正確さを厳密に担保しようとするとどうしても分かりにくくなる。今回の本の目的はそういう細かい話を伝えるというより琉球史の魅力を分かりやすく伝えるということやから、そこは取捨選択の問題であえて犠牲にしているのかなとも思う。

あと、沖縄の歴史を学んでいくと、モノや歴史の見方が知らず知らず日本の本土中心になってたんやなーと気付けて、そういう見方を相対化できる。

例えば、沖縄の歴史には日本の時代区分が通じない(そもそも古墳がないので古墳時代という区分が当てはまらない)とか、城の様式を見ると沖縄のものが特殊に見えるけど、アジアというくくりでみるとむしろ沖縄の方がアジアのスタンダードに近くて日本の方が珍しいということになるとか。琉球は仏教国だったっていうのもイメージになくて新鮮だった。あとは「テンペスト」にも出てきていたけど、ペリーが浦賀に来る前に琉球を訪れていたとか。

もう1つ、琉球史について学ぶことは、単に琉球の歴史を学ぶだけでなくて、日本全体についても示唆を与えてくれるということも語られていた。

「「琉球王国」という東アジアの小さな国が時代の流れに翻弄されながらも、たくましく生き残ろうとしてきた姿は、逆境の中で新しく生まれ変わろうとする現在の日本にも、大きな示唆を与えるのではないでしょうか」(p2)

これは確かになーと思う。ある意味日本の縮図のような側面もあるので、また学びながらいろいろと考える糧にしていきたいと感じた一冊やった。

2013年8月10日土曜日

「会いたい人に会いに行きなさい」は一歩を踏み出すためのエールが詰まっている

会いたい人に会いに行きなさい あなたの人生が変わる「出会い」の活かし方

BMW東京やダイエーで経営者を務めた後に、横浜市の市長になった林文子さんの本。

「市長さん、僕たち、大学を卒業するまでに何をしたらいいですか。若いときに学んでおくべきことは何でしょうか」(p1)

内容としては林さんのこれまでの経験から、仕事や生き方についてどう考えていくと良いかトピックごとに書かれた本。タイトルは出会いの話にみえるけど、それだけではなく、仕事観や人生観について書かれている。

冒頭に、なぜそういうことを語ろうとしたのかということについて、上記の質問への答えという点に加え、経験をもった大人が若い人に向けて語ることの意義も語られている。

最近は、自分の経験を語ったりするのは、は「プライベートで情緒的だという理由で、体験や率直な想いを話すことが否定される風潮」(p3)があり、また、「この不況で忙しいときに、そんな情緒的なことを部下に語っている暇はない、という空気が支配的」(p3)、さらには、「大人のほうが、若い人に対して初めから諦めを懐いている、という印象」がある。

そういう中で、若い人より大人のほうがむしろ壁を作っているのではということが述べられているけど、あえてそういう「プライベートで情緒的」なことを語ることで、少しでも一歩を踏み出すためのヒントになってくれたら…という想いが込められている。タイトルもそのメッセージの1つやと思う。

文章を読んでいて、理由はよくわからんけど柔らかい感じがする。こういう仕事論とか人生論みたいな本って、本によっては押し付けがましい感じがしたりするけど、この本だと、林さんの人柄なのか書き方なのか何なのか、読んでいて素直に受け止められる。

これは本の中でもキーワードとしてあげられている「共感」にも関連しているかも。本の随所に、林さん自身が自身の経験を通じて相手のことを理解する、思いやる、もてなすといったところで「共感」することを大事にされてきていることが語られている。

上記のような疑問も、人によっては「何を甘えたことを言っとるんや!」と一喝して終わりになりそうやけど、林さんの場合はそれを「素直な好奇心から生まれた、素晴らしい質問だと思います」(p1)と受け止めている。そういう雰囲気が伝わってきて、こっちが本を読んでいる=話を聞いているのに、なぜか読後は話を聞いてもらっているような気分になった、気持ちの良い本やった。

1つ印象に残ったのは、芸術や文学に親しんで感性を磨こうという話。実際に舞台を見たり、寄席に通ったりされているとのこと。また、歌舞伎やJ-POP、バードウォッチングといった話も出てきて幅広い。

ビジネスをバリバリやられてきた方で仕事一本集中!という感じの方かと勝手に思っていたんやけど、そうではなく、仕事は一生懸命やり感性も磨くこともしっかりやり、結局そういった感性を磨くことが仕事にもつながってくるという話。

若いときに読んでおきたい本のリストもあって具体的なアドバイスになっていたけど、ピックアップされている本が結構ユニークで面白かった。機会を見つけて読んでみようかなー。あと林さんの他の著書も読んでみたくなった。

まだまだ若い(と思っている)自分にとっては、貴重なアドバイスが詰まっていたり、刺激をもらえたり、アイデアが広がったり、また、嫌っていることとつながっている話もあって自信ももらえたりする、素敵な一冊やった。

特に印象に残ったところとしては以下のあたり。最近営業的なことをする機会も増えているのでこういう考え方は大事にしたい。

■セールスは愛、相手のことを思いやる気持ち
「セールスという仕事の目的も、愛そのものです。自動車でも家でも食品でも電化製品でも何でも、お客様にこの商品を買ってもらったら、その方の生活は絶対楽しくなって便利になり、幸せになる。そういう強い思いで売っています。
 それはそうです。お客様が不快な思いをしたり不幸になるようなものを売るはずがありません。よりよくお金を使ってもらい、「これを買って本当に良かったわ、これがあるとすごく便利ね」と思ってもらうために仕事をしていますから。営業は、お客様にダイレクトに幸せを届けるための仕事なのです。
 ところが激務が続いたり、お客様からクレームをもらったりすると気持ちが荒み、「幸せを届けることが仕事の目的だ」と思えないときがあります。「この商品の販売手数料を稼ぐことが、自分の目的だ」と、〝売ってなんば″的な発想をしてしまうことがあるかもしれません。
 しかしそう思っていると、実際に売れなくなるのが、この営業という仕事でもあります。そうではなく、現場を通して「私はこの商品を通じて、お客様を幸せにしているのだ」という実感を少しでも多く味わってほしい。本当に営業ほど楽しい仕事はないのですから」
「会いたい人に会いに行きなさい」p97-98


■論理がすべてではない
「企業社会のなかでは、計数を見る能力や、物事をロジックで追求していって掌を説得できる能力が評価される傾向があります。
 数字やロジックは、こちらの主張を商談等で相手に明快に伝えるための大きな武器になりますから、当然かもしれません。こうした論理的な能力に長けているのは一般的に男性のほうセ、実際仕事の上で彼らの強みになっていると言えるでしょう。
 これまでの企業文化は、言うまでもなく主に男性によって築かれてきたのですから、会社のなかでこうした価値観が大切にされる理由もわかります。新入社員の多くは、気づかぬうちにロジック重視の価値観を教え込まれ、「結論から言え」「簡潔に言え」と指導されることになります。
 しかし、現場経験の長い私からすると、こうした価値観にも弱みがあると感じられるのは事実です。それは、現場にいる人が日々接するお客様は、必ずしも論理的な話をするわけではないからです。いきなりロジックを使って話し始めたら、お客様の視点や立場に立てなくなってしまうのです。
 お客様の「何となくこう感じるんだけど」という素直な気持ちに寄り添って話を進めたり、その場の勢いに乗って話したほうが、むしろモノが売れる、ということがあります。論理的な話し方が、現場ではマイナス効果を生むことがあります。
 また、会社内でいつも「簡潔に」表現してばかりいたら、本当の気持ちが伝えられなくなったり、論理的な説明が苦手な部下や口下手な部下は、萎縮してしまって自分から口が開けなくなります。
 ロジックに頼ることの弱点は、それによって目の前の相手との間に、壁を作ってしまうことにもあります。論理的な思考をする人は、感性で喋る人の言葉をなかなか理解できないので、そこに壁ができてしまうのです。使う用語や言葉をやさしくする工夫をするだけで、聞く人が理解する程度は大きく違ってくるものです。
 私の経験では、物事を深く追求したり論破することが得意な男性のほうが、他人との間に壁を作りやすい傾向があるように思います。初対面の人にお会いするような機会に、すぐに引いて身構えてしまうようなところに、そうした傾向を感じます。男性特有の闘争本能が、「相手に簡単に胸の内を見せてはいけない」と考えさせてしまうのでしょうか。
 女性よりも男性のほうが自分をガードすることにエネルギーを使うようです。
 男性に見られるこうした傾向とは対照的な女性特有の持ち味は、セールスの現場やお客様重視の考え方において、その力が発揮できる場面が多いように感じます。
 つまり、理屈を述べることはできなくても、初対面の人とでも抵抗感なく会話を始めていける能力や、臨機応変に物事に対応できる能力のことです。目の前の相手に対して心を開く包容力、相手の立場に立って思いを分かち合おうとする共感力、相手のために何かをしたくなるサービス精神などは、女性の多くが持っている強みではないでしょうか」
「会いたい人に会いに行きなさい」p149-151



2013年8月8日木曜日

「社会契約論」(作田啓一=訳)を読んでみてビジネスとかでも通じるところもあるなとも思った

社会契約論 (白水Uブックス)  

ジャン・ジャック=ルソー「社会契約論」(作田啓一=訳)読了。これを読もうという目的があって借りたわけではないけど、図書館の新着コーナーにあったのでたまにはこういう本でも読んでみるかと思って読んでみた。

高校の授業の記憶をうすらぼんやり手繰り寄せながら読んだけど、思っていたより読みづらくはなかった。翻訳も結構読みやすいんやと思う(読み比べては無いからわからんけど…)。

とはいえ、すんなり頭に入ってくる感じではなかった。自分の読解力の問題もあるけど、こういう系統の書籍って一見全体の構造が整理されているように見えて話が飛んでるように見えるところも多くて行きつ戻りつしたりしながら進める感じやった。

全体的には結構理想主義的な感じの話なんやなーと感じた。あと、教科書でも習った(気がする)一般意志についての話も結構ロジックがいろいろ組み立てられていてなるほどなと思う部分もあり、また、法についての話も興味深かった。特に以下の一節。

「建築家が大建造物を建てるまえに、地所を測り、地質を調べて、土地が重みに耐えられるかどうかを見るように、賢明な立法府は、それ自体としては申し分のない法律を編纂することから始めるのではなく、あらかじめ、彼がそれを与えようとしている人民が、それを支えるのにふさわしいかどうかを吟味する」(p69)

これは政府に限らず、会社とかの組織や、家族みたいな共同体においても、規範やルール、仕組みを作っていく上で通じる話なのかなーとも思った。法の正しさとか良さとかの前に、まずその対象や適用範囲となる人々の特性や状況をしっかり見極める必要があるというか。

また、もう1つ印象に残ったのは次のようなあたり。

「いかなる政治体においても、越えることのできない最大限があるが、国家の領土が拡大し過ぎて、この最大限から遠ざかってしまうことがよくある。社会のきずなは、長くなってゆくと、それだけゆるむ。だから、一般に小国家は大国家にくらべると強い」(p72)

「選ばれた百人の人でずっとうまくやれることを、二万人でやるべきでもない」(p106)

このへんも政府だけでなくビジネスとかその他の組織でも通じるかもなーと思ったし、マックの原田さんが本に書かれていたこととも通じるなと思った。

「企画を考えて実行する「仕事」が時間通り進まないとしたら、人数を減らして、一人ひとりの社員の生産性を上げるほうが得策です。
 嘘だと思う人も多いでしょうが、これは本当の話です。
 たとえば、マクドナルドが店舗を増やせば、それだけ店長やクルーの数を増やさなければなりませんが、マーケティングや、商品企画の部署には関係ない。大切なのは、企画から実行までの仕事をいかに効率的に進め、現場に浸透させていくか、それだけです。
「四人よりも二人で取り組んだほうが四分の一の時間ですむ」
 こういうケースが多いのです。人数が倍になれば、議論する時間が四倍になるからです。」
(「とことんやれば、必ずできる」p27)

あと、以下のあたりは、「7つの習慣」で言っているところの「第一の創造」「第二の創造」っていう話とも共通するところがあって興味深いなと思った。

「あらゆる自由な行為は、二つの原因が協力し合うことによって生み出される。その一つは精神的原因、すなわち行動を決定する意志であり、もう一つは物理的原因、すなわちその行動を実現する力である。私がある目標に向かって歩いてゆく場合、第一に、私がそこへゆこうと欲しなければならないし、第二に、私の足が私をそこへ運んでくれなければならない。中風患者が走ろうとしたところで、また、足の速い人でも走ろうとしなければ、どちらももとの場所にとどまっているだろう」(p87-88)

その他、日本の香具師の話が例に出されていたり(p44)、数式とかが出てきたりしていたのはちょっとびっくりした。内容は全然頭に入ってきた感じがせんけど、今後思想史とかに関する本で出てきた時に多少は興味がもてるかなとも思った。