2013年5月6日月曜日

国、家族、人と人とのつながりについて考えさせられる、陳天璽さんの「無国籍」

無国籍 (新潮文庫)

陳天璽「無国籍」読了。横浜中華街生まれの著者が、自身も無国籍であったことの経験から感じたことをベースに書かれたもの。

無国籍者をとりまく問題から、そもそも国家や国籍って何なの?自分のアイデンティティってどうやってできていくの?っていったテーマまで考えさせられる内容。

NHKの番組で無国籍者のことを取り扱っていて、その時に著者が出ていたので読んでみたけど、このテーマに直接の知識や興味はなくても読んでみるといろいろと得られるところがある内容で思った以上に良い内容やった。

番組をみるまでこういう問題があるっていうことをちゃんと知らなかったけど、著者自身も率直にこう書いている。

「いま思い返せば、穴があったら入りたいほどだが、自分の存在がありながら、日本は単一民族国家だと思っていた。また、一つの民族が国家を形成するという図式に疑問を持つこともなく、マイノリティーの人たちのことをはみ出し者、国家において主役になりえない重要でない人たちだと思っていた」(p113)

こういう認識をなんとなく持っているけど、この図式自体を捉え直すとまた違ったものが見えてくるということが分かる本やった。

他に、本の中で著者のお父さんが小学生だった著者にかけていた言葉が印象に残った。

「パパは戦争を経験して思ったんだ。国と国の関係よりも、人と人の関係はもっと深いものだ。本当に理解し合えば争うことはない。だから、ここ日本でお前たちを中国人として育てる。国を超えるような人になって欲しいんだ」
(p50)

テーマは重たいんやけど、自伝、エッセー風に書かれているので読みやすいし、アイデンティティや家族といった普遍的なテーマにもつながる内容なので自分自身につなげて考えられるところも多い一冊やった。


2013年5月5日日曜日

「ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由」

ミッション 元スターバックスCEOが教える働く理由

ボディショップやスターバックスを日本で運営する会社の社長を努められた方がミッションについて書かれた本。

「有名ブランドを冠した手軽なビジネスノウハウの本があふれている中で、あえてそちら側には重きをおかず、読者のミッション構築を促す本を書いてみたい」(p38)という想いから書かれていて、

「そもそも、企業は何のために存在し、利益を出すのか?」
「自分はなぜ働くのか」
「自分は何のために働くのか」

といったことを考えるための内容。

ミッション中心の話で考え方等については他の著者の本でも共通するような内容やけど、想いだけの話ではなく、実際に売上、利益の向上、出店数の拡大、そして離職率の大幅な低下(就任当初の22%から2%まで)、従業員満足度の向上を実現されてきた上で語られているので説得力がある。

印象に残ったのが、交通事故と1杯のコーヒーというエピソード。スタバのお店の前で交通事故が起きた時の出来事。

事故を起こしたドライバーの方を含めて関係者に怪我人はいなかったものの、ドライバーの方はショックを受けて白い顔。警察官の到着を待っている樣子。

すると、その樣子を見たスタバのパートナーの人がコーヒーを1杯持って行って、「どうぞこれを飲んで心を落ち着かせてください」と声をかけてコーヒーを手渡したということ。

そのドライバーの方はお客様ではなくたまたま店の前で事故を起こしただけやけど、こういう対応ができる。そして、こういうことはマニュアル化できない(「店の前で事故が起きたらドライバーの方にコーヒーを差し上げる」みたいなことをマニュアルに書いていくわけにはいかない」。

だからこそ、原則となるミッションの浸透が大事という話。小売やBtoCメインの話ではあるけど、BtoBでも通じるものはあるはずやと思うので、このエピソードは心に留めておきたいと思った。

その他にも、会社、そして、自分自身のミッションを考えていく上でのヒントが詰まった一冊やった。時間を置いてもう一度読みなおしてみたい。