2014年6月21日土曜日

「社長は少しバカが良い 乱世を生き抜くリーダーの鉄則」でエステーを応援したくなった

社長は少しバカがいい。~乱世を生き抜くリーダーの鉄則」読了。エステーの社長を務められている方が主に経営について書かれた本。内容は面白かったのはもちろんやけど、なんというか、力強い本やった。

タイトルは結構目を引く感じやけど、タイトルそのものに関する内容より企業として何を目指すのかというところの心意気や覚悟について強く感じ入るところがある内容。

著者の方は創業者の方の家族ではあるけど、エステーに来たのは51歳の時。その後もなんだかんだあって社長になったのは63歳の時。しかもバブルがはじけた後で経営状況が悪化し、株価もバブル期に7500円だったのが360円台まで下がっている状態。

その状態からどうやって状況を好転させていったか、その背景にある考え方ややってきたことが述べられている。経営方針の大転換と言葉で言えば一言やけど、そこに腹を据えてやりきる過程がすごい。本書ではその様子が垣間見える。

社長就任演説でケンカを売ったとか、バカになって同じことを何度でも繰り返して派手なパフォーマンスをして本気を伝えろとか、あえて角番に立ってクソ度胸を出せとか、経営とは戦争そのものだとか、目次や章立てだけを追っていくと結構勇ましい感じで体育会系な感じ。特に前半部分はそういうのが強くて、精神論的な話が中心かなーと思っていたらそうではない。

ロジカルに考えるべきところは考えた上で、最後の最後で直感とか想いで決断するという話。

「ホラだけ吹いてもアイデアには出合えない。それは、単なる「思いつき」だ。足を運んで店頭を知り尽くし、マーケティングをして、徹底的にロジカルに考えなければ頓珍漢なことになってしまう。
 だけど、それだけじゃアイデアは産まれない。
 多分、ロジカルに考えたことを腹に落としたら、忘れてしまうくらいがいいのではないかと思う。そのうえで、アイデアを考え続ける。夢でも考えるくらいになって、ようやく考えてるっていうんだ。そのうえでホラを吹く。大笑いしながら掛け合いをやる。そのうち、腹の底からアイデアがポンとはじけ飛んでくる。僕は、これこそ右脳と左脳を連動させるってことじゃないかと思う」(p67)

一方、アイデアを出して実行した後はその結果をしっかりトレースしていく。成功するはずだ!という信念と成功させる!という執念がすごい。

象徴的なエピソードが、消臭ポットの発売直後に長野に奥さんと静養に向かった時の話。売れ行きが気になって仕方がなくて、高速のインターチェンジごとに降りて地区ごとの有力販売店の状況をチェックして回ったという。奥さんからは「あなた、何しに来てると思ってるの?」と怒られたという。

全体を通してなんとなく江戸っ子っぽいというかそういう感じがした(実際に江戸っ子かどうかは不明ですが)。10歳の時に終戦を迎えたということで戦争の体験。戦後に親御さんが苦労するところを間近に見られてきて、ご自身ももかなり苦労されているけど、その中から叩き上げてきた経験があるので言葉の1つ1つが力強い。

それがよく現れているのが震災直後に社員にかけた言葉。

「「いいか、こんなのたいしたことないんだ。安心しろ、俺がついてる。俺が10歳のとき、東京は全部燃えて真っ黒焦げになった。俺んとこもそうだった。それで、親父と二人で露天商をやって、くず鉄拾ったりしてなんとか生き延びて、ここまでやってきたんだ。もしも、とんでもないことが起こっても、またもとに戻るだけや。食うや食わずだったけど、日本はそれでも復興した。また、やりゃいいじゃないか。会社のひとつやふたつ、俺がつくってやる。さばさばしたもんだぜ。怖いことなんて何もない。
テレビつけりや深刻な顔して『先行き不安』とか言うけど、先行きなんていつも不安なんだよ。だから、テレビを見るより、ほら、俺の顔を見ろ。俺についてこい。心配するな、負けるもんか。みんな頑張ろう!」」
(p205)

これは戦中戦後をくぐりぬけていないとなかなか言えないような言葉やなーと思った。

そして、ビジネスを通じた、あるいは、ビジネス的な採算を一時度外視してもの社会貢献についても意識が高く、震災後にガイガーカウンターを作って売ったりしている話も紹介されている。ちなみにこれはビジネス的には赤字だったとのことですが、必要とされているという信念で進めたということ。

また、「赤毛のアン」のミュージカルを震災の年にも反対を受けながらも実施して被災者の方をはじめとする方々の気持ちを明るくしようと取り組まれている。これと同じく、消臭力のCMの話もあって、震災後にACのCMばかりあって気がめいる中で、あえて自粛せずに、かつ、気持ちを晴れ晴れとさせるようなCMを作れという号令をかけて実現。これがあのポルトガルで男の子が「ショーシューリキー♩」と歌い上げるもの。やる前はこれについてもかなり批判的な見方があったけど、こういうものが必要だと言う信念で進めている。あのCMは確かに空気感を変えてくれたと思う。

空気ということで、社員の方が作った詩も紹介されていてそれもすごく良かった。

「2003年、社員が詩をつくってくれた。

空気をかえよう
お部屋の、暮らしの、空気をかえたい。
お店の、売場の、空気をかえたい。
そして、日本の、社会の、空気までもかえたい。
そのために、まず、私たちの、空気をかえます。
私たちは、研究・商品で、空気をかえます。
私たちは、営業・販売で、空気をかえます。
私たちは、広告・宣伝で、空気をかえます。
エステーは、挑戦し、提案します。
そして、空気をかえます。

僕たちは、モノをつくってるのではない。お客様に感動を届けている。生きていればいろんなことがある。だけど、エステーの企業活動還して、ほんの少しでも明るく、元気になっていただけるなら、こんなに嬉しいことはない。そんな存在意義を根っこにもっている会社こそ、強い会社ではないだろうか。わずか500人の小さな会社が「日本の空気までもかえたい」なんてずいぶん図々しいが、言論の自由だ。そのくらいの心意気がなくて会社などやってられるか。

そして、その心意気のシンボルが「赤毛のアン」だ。社長がいくら口で「社会貢献」を唱えたところで、単なる寝言だ。思いを込めてやり統けることで、はじめて本物になる。だから、これは僕の命がけの道楽なのだ。」(p195-196)

他にもいくつか印象に残った言葉が以下。

「社長業とは「決断業」だ。
 社長は、自らを恃んで纏を立てなきゃならない。
 的はずれなことをしてはまずいが、間違いを怖れてグズグズしているのが一番ダメだ。」(p28)

「お客様はモノがいいからというだけで買っていただけるわけではない。何か精神的な満足を求めていらっしゃる。それこそが商品の価値だ。「聞いてわかる」「見てわかる」でお客様を創造し、「使ってわかる」でリピーターになっていただく。この無限循環運動こそがビジネスの本質だ。そして、リピーターの方が感じてくださっている「信頼」こそが、ブランドである」(p129)

「たしかに、ウチの社是は「誠実」。しかし、創業した兄貴がこの言葉に込めた思いは、「言ったことを成し、実現する」ということだ。真面目そうな顔をして、クヨクヨしてるのが誠実ということではない。やることをやり切って、後は「なるようになるさ」とグッスリ眠る。失敗しても笑って、次の挑戦に全力でぶつかる。そんな、強くて明るい会社にしたいものだ」(p180)

一番最後のあとがきに、こう書いてあったのも印象的やった。

「ジョブズが亡くなってしまった。もう、この世に俺しかいない」(p255)

嘯いているといえばそうかもしれんし、この言葉だけをみるとえーって思ったかもしれんけど、一冊の内容を読んできてこの言葉をみると、さもありなんという感じもする。

とりあえず、同じような製品が並んでたらエステーの方を買おうかなと思った。

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