2014年6月26日木曜日

「図説 アジア文字入門」を読んで意味不明の文字でも楽しめるようになったかも?

図説 アジア文字入門 (ふくろうの本/世界の文化)

文字からアジアを見ていくという内容。執筆者の方は、文字の専門家ではなく、文字に関する知識をツールとして使って言語、歴史、宗教等を研究している、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の方々。

「日常、研究のツールとしてつかっている文字を中心にすえて、あるいは文字そのものを切り口に、知識の足りないところは互いに補いあいながら、もう一度専門分野のことば、地域、歴史、文化を見なおしたらどうだろう、と考えたのが最初の出発点」(p110)ということ。

こういう背景もあってか、単に文字の紹介の羅列という感じではなく、文字の背景となっている歴史や文化についても触れられていてそのあたりが面白かった。

具体的に扱われているのはインド系文字、アラビア文字、漢字と漢字系文字、ラテン文字、キリル文字など。

さすがに日本で教育を受けてきたので漢字の話には結構なじみがあるけど、それ以外はほとんどよく分からないのと、インド系文字のところでタミル語が紹介されていたので興味をもって読んでみた。

言われてみれば目から鱗だったのが、インド系文字の広がり。漢字やラテン文字の方がなじみがあるけど、インド系文字も世界に占める位置は結構大きい。

インド系の文字は、インドと周辺の南アジア地域以外にも、東南アジア(ビルマ、タイ、カンボジアなど)やチベットにも波及している。また、今はラテン文字を使うベトナム、フィリピン、インドネシアにもかつてはインド系文字が使われていた時代もあったという。

大体このへんの地域の文字は先祖をたどっていくと1つの文字にいきつくという。それは大体今から2300年前にインドで生まれたブラーフミー文字。

タミル語を去年まで結構勉強しとったけど、確かに上記で挙げられている地域の文字をみるとなんか近いものを感じる。タミル語の文字は、ヒンディー語の文字よりもむしろタイとかビルマの方の文字の方に似ている感じがするのが興味深かった。

それに関連して面白かったのが、「オ」のDNAという話。オの音を表わすには、アを表わす記号とエを表わす記号との組み合わせで表現する。タミル語だと、アは子音記号の右側、エは子音記号の左側に母音記号を書き、オの場合は子音記号の両側に母音記号を書く形になる。

これが最初中々慣れんかった。英語とかだと基本的には母音記号と子音記号は左から右に読む順に流れていくんやけど、タミル語やとオ音が入るとごちゃごちゃっとした流れになる。

なんでこんな仕組みなんやろうなーと思ったけど、これは先祖のブラーフミー文字の仕組みを受け継いでいるということ。

以下の説明を読んでストンと腹に落ちた。

「-oをこのようにあらわさなければならない理由はどこにもないのですから、これはブラーフミー文字がたまたま取った方法にすぎません。しかしこの「たまたま」の結果が、まるで遺伝子のDNAのように子孫の文字たちに引き継がれていくのです」(p23)

もう1つ面白かったのがインド系の文字と漢字系の文字の対比。インド系の文字は、ほとんどがブラーフミー文字をベースにしているけどそれは結構シンプルなもの。

しかしその子孫たちは結構複雑な形をしていて、これは先祖の文字にはなかった装飾的な要素がおもいおもいに加えられて独自の形になっていったということ。

これに対して、甲骨文字、篆書、隷書、楷書へとたどってきた漢字はどんどん簡略化されていったという。日本ではさらにそれがひらがなに展開されてよりシンプルな形状になったりしてるけど、そのへんがなんか文化にも反映されている気がして面白かった。

海外に行ったりしてもいろんな文字を何気なくみてるけど、こういう地理的、歴史的なつながりに想いを馳せながらみてみると、意味がわからなくても結構楽しめるかもなーと思わせてくれる一冊やった。

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