2015年1月4日日曜日

「新版 親だからできる赤ちゃんからのシュタイナー教育」はシュタイナー教育に限らずに子育て本として参考になる一冊やった

新版 親だからできる赤ちゃんからのシュタイナー教育

3児の母でもある著者が、シュタイナー教育から学んだことや、子育てや幼児教育に携わった経験から子育てについての考え方をまとめた本。

著者は1980年にシュタイナー教育について学び始めこの本の初版を1989年に書き上げたという。その後2012年に新版として改訂されたのが本書。初版の出版後、アメリカで助産師の仕事を行った後、老年学や組織変動について修士課程で学びつつ、実母と義母の介護を行い、その後再び幼児教育と子育ての世界に戻って各種活動を行っている。

全体的な構成としては、全体的な考え方が最初の方で少し触れられた後、新生児から就学前くらいまでの経年にそって、それぞれの時期の子どもはどういう状態なのか、それに対してどういうことを手助けしてあげていけばよいかということが書かれている。

結構哲学的だったりスピリチュアルな話もありつつ、しつけ等の話では結構具体的な話が書かれている。例えば、「だめ!」と言う時にはどうするか、否定的な行動にはどう対応するか等。また、特に後半では想像力や創造性を育てることの重要性が説かれていて、最後のQ&Aではテレビや電子ゲームに関しての考え方等が扱われていて実践的。

1つ印象に残ったのは、最初の1年間に関する話。「泣いたら抱っこ」が信頼の基礎と言いつつ、一方で、「完全な育児」を行おうとすることの難しさにも触れている。以下のようにも書かれている。

「あなたがどれだけたくさん抱っこするかということは、確かに赤ちゃんに影響するでしょうが、それは自分自身の要求や感情的な安定とバランスがとれていなければなりません」(p51)

また、以下のあたりは、この前に読んだ「その子育ては科学的に間違っています」の話とも通じる部分があって興味深かった。

「あなたは自分のやり方を決めなければなりません。夜に授乳することであなたが幸せなら、変える必要はありません。けれどもあなたが疲れてしまうなら、習慣となっているパターンを変えましょう。
 赤ちゃんが夜泣いたら、あかちゃんに「大好きよ、だけど今は寝る時間」と、自分の意図をしっかり集中させて言います。おっぱいをあげず、抱っこしたり、背中をやさしく叩くだけにしておきます。赤ちゃんが泣くのを聞くのはとてもつらいかもしれませんが、三分か五分したらまた行って、「ごめんね、だけど今は寝る時間なのよ」と、とても眠い感じで言います。その後もう少し間をあけたりして、必要なだけ繰り返します。赤ちゃんは、食べ物は来ないけれども、愛情と関心は示されるので捨てられたのではない、ということを学ぶでしょう」(p53)

「家の中を、子どもにとってできるかぎり自由があり、「だめ」ができるだけ少ないように整えつつも、その後は、許されていないことに関しては頑固になるということです。
 子どもが好奇心いっぱいであることはすてきなことですが、あなたの化粧品で遊ぶ必要はありません。そういうときは、「だめ」ときっぱり言って、その場から子供を動かし、化粧品を子どもの近づけない所にしまいます。子どもを罰する必要はありません。幼児は自分のしたことを理解できないし、次のときまで覚えておくこともできないからです」(p66)

その他、しつけの仕方のところで、以下のようなポイントは心に留めておきたいと思った。

・例を見せて模倣させて教える
・やってほしい行動を子供と一緒に行う
・否定ではなく肯定的な表現を使う

例:
「手で食べてはだめ」ではなく、スプーンを持って「ごはんはスプーンで食べるのよ」と言う
「おもちゃを片付けなさい」ではなく、「おもちゃを片づける時間ですよ」と言いながら一緒に片付ける
(p109)

また、否定的な行動をした時に、無視してもエスカレートしてしまう。そういう場合には、穏やかで創造的なやりとりが効果的という話もなるほどなと思った。例えば、2歳の子どもをショッピングカートに乗せて買い物をしている時にうるさくする場合の対処法。

・カートを止めて「静かにお座りするまで、もうこのカートは動かないのよ」と言う
・歌ってあげる
・「パイナップルジュースを買うまで5つの物をカートに入れるけれども、良い子にしていたら、ジュースを買う時は自分で入れさせてあげる」と言う
・「野菜売り場でしっかり見張っていて、人参があったらお母さんに教えてね」と言う

こういうやりとりをすれば
「子どもはいらいらしなくていいのですし、私たちだっていらいらさせられなくていいのです」(p114)
ということであり、子どもに必要なのは「創造的なやりとり」(p114)ということ。

個人的には、上の例の特に最後の言葉がなるほどなーと思った。ネガティブな行動にネガティブな感情で対処するのではなく、まず自分が落ち着いた上で子どもも楽しめる方法を探して実践するということやと思う。ただ、そうは言っても実際の場面でそれができるかというと修行が必要そうやけど…頭には入れておいて思い出せるようにしておきたい。

あと、以下の話も興味深かった。少し年齢があがってきて、いろんなことについて質問した時の答え方。何か聞いている時に、仕組みや科学的な説明を求めているのではなく、目的は何かということを聞いているということ。

「たとえば、四歳の子どもが「なぜお日さまは明るいの?」と聞いたら、「木や草を大きくさせ、私たちを元気にしてくれるためよ」と答えることで、子どもは充分満足するのです。気体が燃えているとか、紫外線といった概念的な答えは、必要ではありません」(p194)

このへんは考え方によるところもあるやろうなーとは思ったけど、1つの答え方としては面白いなーと思った。その他にも、想像力や生活のリズムの大切さなどはキーワードとして頭においておきたいと思った。

最後に訳者の方があとがきで述べているけど、「「シュタイナー的な」特殊なテクニックやシステム」(p254)が大切なのではなく、基盤にある思想であり、「それは実は伝統的な社会が守ってきた子育ての知恵とも重なっている」(p254)ということ。

また、同じく訳者の方が、専門の教育機関に通ったりできる環境にあるならそれはそれでいいけど、そうでなくてもコアにある知恵を活かすことはできるのではとも述べている。

この本の内容自体もたぶんシュタイナー教育に関する専門的な内容というよりは、子育て全般に関して著者の経験からの考え方を紹介している感じやけど、根底にある考え方とかは参考になるところがあって、シュタイナー教育に限らずに子育てに関する本の1つとして読んでみて得るところのある一冊やないかなーと思った。


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