2013年6月19日水曜日

分かっちゃいるけどできない「実行力不全」

実行力不全 なぜ知識を行動に活かせないのか (Harvard business school press)

経営手法や業績向上のノウハウについて、本や研修、セミナー等を通じて巷に情報があふれていてたくさんの人が知っている。しかし、実際にそれをしっかり実行できている人や組織は少ない。そのギャップはなぜなのかという問いからスタートする本。

以下のあたりが気になる人は読むと面白いかも。

■言葉が行動のかわりになってしまう理由
・話し合いの結果を実際に行ったかどうかを確かめるフォローアップが何も行われない。
・決定しただけでは何も変わらないことを、人々が忘れている。
・計画立案、会議、レポート作成などがそれ自体重要な「行動」になっている。しかし、実際の行動には何の影響も与えていない。
・話し合ったのだから、社訓に書かれているのだから、それは事実に違いないし、社内で実行されているはずだと考える。
・実行力より、スマートな発言が評価される。
・発言が多いことが、仕事ができることだと誤解される。
・複雑な用語、アイデア、プロセス、構造などが、単純なものよりもよいと考えられている。
・マネジャーは言葉の達人であり、部下は行動する人という考え方がある。
・社内でのステータスが、たくさん発言し、相手の発言をさえぎったり、批判的なコメントをはさんだりすることで決まる。
(p67)


「知識はもっともなものだが、マネジャーの行動にさっぱり現れてこないのだ。なぜだろう?
やり方を知っているだけでは不十分なのだ。才気だけでは、知識を実行できない。すばらしいアイデアも、読んだり、聞いたり、考えたり、書いたりするだけではだめなのだ」(p3)

「私たちは、知識の伝達や情報の交換がすばらしく効率的にできる時代に生きている。情報を集めて伝えることがビジネスにもなる時代だ。だから、知識の量にはそれほど差がなくなった。しかし、知識に基づいて行動するとなると、企業によって大きな差がある」(p256)


■なぜ知識を行動に変えられないのか
本書を通底する問いは以下のようなもの。

「企業はなぜ知識を行動に変えられないのか?」
「この問題を克服した企業はどのような手段を用いたのか?なぜそうしたのか?」(p4)

訳書の「実行力不全」という題名もそれをあらわしているけど、原著の題名も「The Knowing-Doing Gap」とあり、それをよくあらわしている。この本ではたくさんの事例を通じてこの問いについて繰り返し繰り返しいろんな角度から考察されている。

最初の方では、いかに知識と行動にギャップがあるか、良い知識やノウハウがあってもたとえ同じ会社内であってもうまく伝わらず、さらには実行されないということがいろんな会社の例を通じて紹介されている。例えば、あるメーカーの次のようなエピソードが紹介されている。

「「そうするべきだ」とCEOは決断した。……エンジニアリング部長も同意した。……ただし、部長は実行することに同意したのではない。「そうするべきだ」という考えに同意したのである。決定は従業員に伝えられた。みんなの期待は高まった。少なくともある程度は実行されるだろう。しかし何も起こらなかった」(p46)


■なぜ知識と行動のギャップが生まれるのか
言葉が行動のかわりになってしまう、計画しただけで行動した気になる…といった言葉が並んでいる。自分自身も分かっていても実行できてないことがたくさんあるので耳が痛いことがたくさん。
2章以降の各章では、なぜギャップが生まれていくかということについて、テーマを1つずつ挙げて事例を紹介している。章立てを見てもこんな感じ。

・言葉を行動と錯覚してはいないか?
・前例が思考を妨げる
・恐怖心が行動をはばむ
・評価方法が判断力を狂わせる
・内部競争が敵をつくる

1つ1つのテーマは言われてみれば当たり前なんやけど、組織としてはそうなってしまいがちな感じのテーマが多く、改めて気づかされるポイントも少なくない。


■何はともあれ実行
その上で、じゃあどうしていけば良いかというと、7章で事例がいくつか紹介されている。ブリティッシュ・ペトロリアムやバークレイズ・グローバル・インベスターズ、ニュージーランド・ポスト等。社内での情報共有やコミュニケーション、制度設計がどのように行われたかが紹介されている。あくまで概要の紹介レベルなのでさらっと読んでいくとふーんっていう感じで終わっちゃう。このため、具体的にどう進めていったかは個々の事例をみていく必要があるけど、全体を通じては、やはり実行が重視されている。

「本当に実行できる知識は、本を読んだり人に聞いたり、考えたりして学ぶことよりも、行動から得られる」(p22)

むやみやたらに実行だけしてもダメなことはダメということはあるが、実行しないよりは実行して失敗した方がベターという話なのでまずは実行ということか。

いずれにしても、どうすればの具体策は置いておいたとしても、知識と行動のギャップを認識できるだけでも価値がある一冊やと思った。

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