2013年8月10日土曜日

「会いたい人に会いに行きなさい」は一歩を踏み出すためのエールが詰まっている

会いたい人に会いに行きなさい あなたの人生が変わる「出会い」の活かし方

BMW東京やダイエーで経営者を務めた後に、横浜市の市長になった林文子さんの本。

「市長さん、僕たち、大学を卒業するまでに何をしたらいいですか。若いときに学んでおくべきことは何でしょうか」(p1)

内容としては林さんのこれまでの経験から、仕事や生き方についてどう考えていくと良いかトピックごとに書かれた本。タイトルは出会いの話にみえるけど、それだけではなく、仕事観や人生観について書かれている。

冒頭に、なぜそういうことを語ろうとしたのかということについて、上記の質問への答えという点に加え、経験をもった大人が若い人に向けて語ることの意義も語られている。

最近は、自分の経験を語ったりするのは、は「プライベートで情緒的だという理由で、体験や率直な想いを話すことが否定される風潮」(p3)があり、また、「この不況で忙しいときに、そんな情緒的なことを部下に語っている暇はない、という空気が支配的」(p3)、さらには、「大人のほうが、若い人に対して初めから諦めを懐いている、という印象」がある。

そういう中で、若い人より大人のほうがむしろ壁を作っているのではということが述べられているけど、あえてそういう「プライベートで情緒的」なことを語ることで、少しでも一歩を踏み出すためのヒントになってくれたら…という想いが込められている。タイトルもそのメッセージの1つやと思う。

文章を読んでいて、理由はよくわからんけど柔らかい感じがする。こういう仕事論とか人生論みたいな本って、本によっては押し付けがましい感じがしたりするけど、この本だと、林さんの人柄なのか書き方なのか何なのか、読んでいて素直に受け止められる。

これは本の中でもキーワードとしてあげられている「共感」にも関連しているかも。本の随所に、林さん自身が自身の経験を通じて相手のことを理解する、思いやる、もてなすといったところで「共感」することを大事にされてきていることが語られている。

上記のような疑問も、人によっては「何を甘えたことを言っとるんや!」と一喝して終わりになりそうやけど、林さんの場合はそれを「素直な好奇心から生まれた、素晴らしい質問だと思います」(p1)と受け止めている。そういう雰囲気が伝わってきて、こっちが本を読んでいる=話を聞いているのに、なぜか読後は話を聞いてもらっているような気分になった、気持ちの良い本やった。

1つ印象に残ったのは、芸術や文学に親しんで感性を磨こうという話。実際に舞台を見たり、寄席に通ったりされているとのこと。また、歌舞伎やJ-POP、バードウォッチングといった話も出てきて幅広い。

ビジネスをバリバリやられてきた方で仕事一本集中!という感じの方かと勝手に思っていたんやけど、そうではなく、仕事は一生懸命やり感性も磨くこともしっかりやり、結局そういった感性を磨くことが仕事にもつながってくるという話。

若いときに読んでおきたい本のリストもあって具体的なアドバイスになっていたけど、ピックアップされている本が結構ユニークで面白かった。機会を見つけて読んでみようかなー。あと林さんの他の著書も読んでみたくなった。

まだまだ若い(と思っている)自分にとっては、貴重なアドバイスが詰まっていたり、刺激をもらえたり、アイデアが広がったり、また、嫌っていることとつながっている話もあって自信ももらえたりする、素敵な一冊やった。

特に印象に残ったところとしては以下のあたり。最近営業的なことをする機会も増えているのでこういう考え方は大事にしたい。

■セールスは愛、相手のことを思いやる気持ち
「セールスという仕事の目的も、愛そのものです。自動車でも家でも食品でも電化製品でも何でも、お客様にこの商品を買ってもらったら、その方の生活は絶対楽しくなって便利になり、幸せになる。そういう強い思いで売っています。
 それはそうです。お客様が不快な思いをしたり不幸になるようなものを売るはずがありません。よりよくお金を使ってもらい、「これを買って本当に良かったわ、これがあるとすごく便利ね」と思ってもらうために仕事をしていますから。営業は、お客様にダイレクトに幸せを届けるための仕事なのです。
 ところが激務が続いたり、お客様からクレームをもらったりすると気持ちが荒み、「幸せを届けることが仕事の目的だ」と思えないときがあります。「この商品の販売手数料を稼ぐことが、自分の目的だ」と、〝売ってなんば″的な発想をしてしまうことがあるかもしれません。
 しかしそう思っていると、実際に売れなくなるのが、この営業という仕事でもあります。そうではなく、現場を通して「私はこの商品を通じて、お客様を幸せにしているのだ」という実感を少しでも多く味わってほしい。本当に営業ほど楽しい仕事はないのですから」
「会いたい人に会いに行きなさい」p97-98


■論理がすべてではない
「企業社会のなかでは、計数を見る能力や、物事をロジックで追求していって掌を説得できる能力が評価される傾向があります。
 数字やロジックは、こちらの主張を商談等で相手に明快に伝えるための大きな武器になりますから、当然かもしれません。こうした論理的な能力に長けているのは一般的に男性のほうセ、実際仕事の上で彼らの強みになっていると言えるでしょう。
 これまでの企業文化は、言うまでもなく主に男性によって築かれてきたのですから、会社のなかでこうした価値観が大切にされる理由もわかります。新入社員の多くは、気づかぬうちにロジック重視の価値観を教え込まれ、「結論から言え」「簡潔に言え」と指導されることになります。
 しかし、現場経験の長い私からすると、こうした価値観にも弱みがあると感じられるのは事実です。それは、現場にいる人が日々接するお客様は、必ずしも論理的な話をするわけではないからです。いきなりロジックを使って話し始めたら、お客様の視点や立場に立てなくなってしまうのです。
 お客様の「何となくこう感じるんだけど」という素直な気持ちに寄り添って話を進めたり、その場の勢いに乗って話したほうが、むしろモノが売れる、ということがあります。論理的な話し方が、現場ではマイナス効果を生むことがあります。
 また、会社内でいつも「簡潔に」表現してばかりいたら、本当の気持ちが伝えられなくなったり、論理的な説明が苦手な部下や口下手な部下は、萎縮してしまって自分から口が開けなくなります。
 ロジックに頼ることの弱点は、それによって目の前の相手との間に、壁を作ってしまうことにもあります。論理的な思考をする人は、感性で喋る人の言葉をなかなか理解できないので、そこに壁ができてしまうのです。使う用語や言葉をやさしくする工夫をするだけで、聞く人が理解する程度は大きく違ってくるものです。
 私の経験では、物事を深く追求したり論破することが得意な男性のほうが、他人との間に壁を作りやすい傾向があるように思います。初対面の人にお会いするような機会に、すぐに引いて身構えてしまうようなところに、そうした傾向を感じます。男性特有の闘争本能が、「相手に簡単に胸の内を見せてはいけない」と考えさせてしまうのでしょうか。
 女性よりも男性のほうが自分をガードすることにエネルギーを使うようです。
 男性に見られるこうした傾向とは対照的な女性特有の持ち味は、セールスの現場やお客様重視の考え方において、その力が発揮できる場面が多いように感じます。
 つまり、理屈を述べることはできなくても、初対面の人とでも抵抗感なく会話を始めていける能力や、臨機応変に物事に対応できる能力のことです。目の前の相手に対して心を開く包容力、相手の立場に立って思いを分かち合おうとする共感力、相手のために何かをしたくなるサービス精神などは、女性の多くが持っている強みではないでしょうか」
「会いたい人に会いに行きなさい」p149-151



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