2013年8月12日月曜日

「知れば知るほどおもしろい 琉球王朝のすべて」は現代日本にも示唆を与えてくれる一冊

知れば知るほどおもしろい 琉球王朝のすべて  

NHKのBSドラマ「テンペスト」の時代考証を担当された方と、沖縄出身で沖縄国際大学を卒業して那覇市の歴史博物館の学芸員を務められている若い研究者の方が書かれた、琉球史についての本。

最近「テンペスト」はじめ、琉球王国を舞台にした小説やドラマが人気になっているにもかかわらず、フィクションではない琉球史(特に近世琉球)を紹介した入門書がまだまだ少ないので、そこをカバーするという面もある。

琉球の歴史の面白さをもっと楽しんでもらえるようにという想いで書かれているので、歴史の専門書のような小難しい内容ではなく、雑誌とかのコラムのような感覚でさらっと楽しく読める。「現代を生きる読者が納得・理解し、共有できるよう」(p1)という想いのもの書かれたもの。「テンペスト」に出てきた話に関するトピックも多くて、あわせて読むとイメージがしやすくなってより楽しめると思う。

著者の一人の方は1984年生まれということで自分とほぼ同年代ということもあるけど、文章も若い感覚があるような感じ。例も現代的なものをいろいろと比喩に出していてイメージしやすい。この方は、もう一人の著者の方から、「柔軟な思考、感性」(p1)を持っていると見込まれて共同執筆を依頼されたとのこと。その部分が内容にも活きていると思う。

もちろん、細かいところや正確さと言うところでは専門家からしたらツッコミどころがあるんやろうけど、正確さを厳密に担保しようとするとどうしても分かりにくくなる。今回の本の目的はそういう細かい話を伝えるというより琉球史の魅力を分かりやすく伝えるということやから、そこは取捨選択の問題であえて犠牲にしているのかなとも思う。

あと、沖縄の歴史を学んでいくと、モノや歴史の見方が知らず知らず日本の本土中心になってたんやなーと気付けて、そういう見方を相対化できる。

例えば、沖縄の歴史には日本の時代区分が通じない(そもそも古墳がないので古墳時代という区分が当てはまらない)とか、城の様式を見ると沖縄のものが特殊に見えるけど、アジアというくくりでみるとむしろ沖縄の方がアジアのスタンダードに近くて日本の方が珍しいということになるとか。琉球は仏教国だったっていうのもイメージになくて新鮮だった。あとは「テンペスト」にも出てきていたけど、ペリーが浦賀に来る前に琉球を訪れていたとか。

もう1つ、琉球史について学ぶことは、単に琉球の歴史を学ぶだけでなくて、日本全体についても示唆を与えてくれるということも語られていた。

「「琉球王国」という東アジアの小さな国が時代の流れに翻弄されながらも、たくましく生き残ろうとしてきた姿は、逆境の中で新しく生まれ変わろうとする現在の日本にも、大きな示唆を与えるのではないでしょうか」(p2)

これは確かになーと思う。ある意味日本の縮図のような側面もあるので、また学びながらいろいろと考える糧にしていきたいと感じた一冊やった。

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