2014年9月4日木曜日

スポーツもマネジメントも興味あると2倍面白い「スポーツ・マネジメント入門 〔第2版〕 24のキーワードで理解する 」

スポーツ・マネジメント入門 〔第2版〕: 24のキーワードで理解する  

もともとは2005年に出版されたもので10年ぶりに改訂されたもの。第2版って内容が大して変わってなかったりするものもあるけど、これは発行年が2014年ということもあり、結構最近の話題まで取り入れられている。

内容としては、マネジメントの本質、スポーツ・マネジメントとは、戦略の基本等の、マネジメント関連のトピックから、GMの役割、スポーツが持つ公共性等、スポーツに特有の話までカバーされている。戦略や会議の進め方の話まであり、普通にマネジメントの本として読んでも結構参考になる。あと、CRMの話もあり、個人的にはここはかなり気になるところやった。

全体的には考え方や方法論が体系的に整理されている感じ。言葉遣いがちょっとかためではあるので経営用語に慣れていないとちょっと読みづらさを感じるかもしれないし、すぐに実務に役立つ知識やノウハウが詰まっているというわけではないけど、重要なトピックが網羅されていて、全体像をつかんで整理するのにかなり良さそう。

以下、特にスポーツ・マネジメントのトピックとして興味深かったポイント。ただ、スポーツに限らず、他の領域では通じるところも結構ある気がする。

■勝敗を事業性とリンクさせない
「負けてもそれなりの「価値/満足」を感じてもらえるような、エンターテイメント的な要素や付加価値を創出する必要があります。肝心なのは、「事業をできるかぎり勝敗にリンクさせないこと」なのです」(p202)

「集めたよい選手を使っていかに勝たせるか、と考えるのは競技マネジメントの部分になりますが、スポーツ・マネジメント的な観点で最も大切なのは、競技の成績にかかわらずいかに収益を上げるか、という点なのです」(p44)

このあたりは、先日のサイボウズ超会議で話されていた内容の中で小澤さんが仰っていたこととも通じる。

■商品というゲームの価値向上においては相手チームも協力関係
商品はゲームであることを踏まえると、まずそもそも、「自チームで売る商品が、そのチーム単独では生産されない」(p46)。かつ、拮抗した魅力的なゲームを作り上げるには、相手チームとの関係が重要。すなわち、「相手チームとはゲームでは競合関係でありながら、事業としては協力関係」(p46)にある。さらには、リーグ戦の場合はリーグ全体におけるバランスが重要になってくる。

■サポーターは経営の「リソース」でもある
サポーターは普通に考えると「顧客」だが、選手への応援や場の雰囲気づくりによってゲームの価値を高めることにも貢献している。
「観客は「顧客」であると同時に、「ゲームという商品」の室を高めることに寄与する重要な要素」(p19)であるということ。

■プロ野球ではジャイアンツこそがフリーライダーである
ジャイアンツ戦がなぜ面白かったかというと、ジャイアンツがただ強かっただけではなくて、打倒ジャイアンツを掲げるライバルチームがエースピッチャーを対戦させてくることにおり、試合としての盛り上がりが生まれたということ。

そのために、他チームは戦力補強をするが、これはすなわち、「ジャイアンツ戦がおもしろいコンテンツとなるためのコストの何割かは、相手チームが担っていること」(p15)になる。

しかし、入場料や放映権等からあがる収入はそのコストに応じては還元されず、ジャイアンツに集中する。これはジャイアンツの問題というよりリーグの構造の問題であり、この問題がプロ野球再編問題として表面化してきているというのが著者の見方。

■バルセロナの質を高めるためにやったこと
FCバルセロナの経営改革を行なったソリアーノ氏との話の中で出てきていた話。ビジョンは、「バルサを競技力とビジネスの両面において、世界最高の質に高める」(p86)ことであり、そのためにやったのが以下の3つ。

・課題の優先順位を決める
・実施のフレームを決める
・各領域における優秀な専門家を招き、彼らの能力を発揮させる

そして「それ以外に私がしたことはない」(p86)と言い切ったという。こうやって書くと、なんて当たり前な…というか、当たり前すぎて一瞬きょとんとしてしまったけど、よくよく考えると世界最高のレベルでこれをやりきるっていうことはそう簡単にできることでもない。逆に、当たり前のことを高いレベルで当たり前にやっていけば、高い質を生み出していけるということやろうなーと改めて思った。

その他、ちょっと雑学的な知らんかったけどそうなんやーっていう感じで、以下の話も興味深かった。

・マンチェスター・ユナイテッドのチームの総人件費は絶対額においてリーグ最高額ではない。また、事業費における選手人件費の割合が最も低い(p43)。

・スポーツ施設の多くは、スポーツが文部科学省の管轄下にあるため、地域の教育委員会に利用方法が委ねられていることが多い。その評価基準は「教育的見地」となるため、プロチームの使用を学校体育より優先させる論理がそもそもない。そこにあわせて調整していく必要がある。例えば、文部科学省が推進している「子供の居場所づくり」というプロジェクトとからめてソフト事業を提案するとか(p210)。

・国立競技場の管理管轄は代々木公園の管理事務所。スポーツ施設の管理と公園の管理は本来管理ナレッジとしては別物だし目指すところもずれる。美しい庭であることを理想とする公園管理と、たくさんの人が来たり飲食店があってにぎわっていたりというスポーツ施設上の要請はいtっ治しない。

あと、CRMについては結構具体的なツールまで紹介されとった。ぴあとシナジー(あと分析エンジンとしてxica社のサービス)を連携させたソリューションの様子。これはこれで良さそうなんやけど、もう少しライトに手頃な値段で使いたいというニーズがあれば(例えばJ2とかJ3の予算規模がさらに限られるような場合とか)、Zoho CRMとかも結構有効な解決策になるんやないかなーとちょっと妄想してみた。

そのあたりも含めてスポーツにもマネジメントにも関心がある自分にはなかなか興味深い一冊やった。

0 件のコメント:

コメントを投稿