2015年2月1日日曜日

「盆おどる本 盆おどりをはじめよう!」で感じる盆踊りの広がりと可能性

表題もさることながら、装丁に目をひかれて手に取ってみた。盆踊りについての入門書。

本書の最初の方にも書いてあるけど、盆踊りについての入門書やガイドブックは不思議なことにほとんど見つけることができないらしい。そんな中で、盆踊りとはそもそも何なのか、各地での広がりはどうなっているのか、時代にあわせた新しい動きにはどのようなものがあるのかといった内容。

コラムとシュールな画風(しりあがり寿っぽい)の漫画とが交互になっていて、コラムの部分は雑学的にも面白いし、漫画はあまり考えずに読める感じで盆踊りの楽しみ方みたいなものがテーマなので、気楽に楽しく読めた。

盆踊りの由来については、「仏教から由来するものと、仏教以前からの精霊や地霊、祖霊などを供養して、おもてなしをするという2つの要素」(p21)があわさったもので「さまざまな悪霊が災いをもたらさないように踊りの輪の中に巻き込んでともにおどるのは、人間が生きていくために無意識のうちに行われたもので、盆踊りの起源に最も近いもの」(p21)と思われるということ。

仏教由来の話については、一遍上人の踊り念仏の話につながり、一遍上人の足跡が残る地域では盆踊りが盛んに行われているらしい。一遍上人のことは歴史の教科書でも習ってはいたけど、盆踊りとつながっているということで急に身近な感じがしてきた。だから広まったのかなー。

面白かったのが、ハワイでも盆踊りが盛んに踊られていて、BON DANCEと呼ばれているということ。結構盛大に催されているということ。人気が高いものとしては「フクシマオンド」があり、これは福島からハワイへの移民が多いことが背景にあるという。しかも、福島の「相馬盆踊り」を見に行くと、ハワイでも福島でも踊りがまったく同じだということ。

それで、日本以外の国で盆踊り的なものがあるかどうかというと、祖霊信仰が薄いヨーロッパでは見当たらない一方で、アメリカ大陸などのモンゴロイド系少数民族では年に1度祖霊を供養するようなお祭りを開くことが多いという。リオのカーニバルもその一種と言われていてびっくりしたけど、あれは華やかな衣装を身にまとって神霊に変身してご先祖様や土地神様に感謝しているという。

また、盆踊りの歌詞には土地の名前やお城などのランドマーク、名物や伝説が読み込まれていて、盆おどりを通じてその土地の歴史や文化にもつながってくる。踊る格好は地元の繊維や呉服産業とつながり、食べ物は地元の美味しいものとつながっている。秋田の西馬音内なら蕎麦、郡上おどりだと鮎の塩焼きという感じで、生活文化や環境が盆踊りにも反映されてくるということ。

印象に残ったのが宮城の松島の話。もともと700年続くお盆行事があり、その前夜祭として花火大会があったが、いつしかその花火大会がメインイベントに。震災後、花火大会の開催が難しいという話が出てきたが、その際に、本来観光イベントではなくて夏祭りでそれこそ供養行事なので中止はおかしくないかということで、有志が集まって原点回帰の方向で盆踊り会場を約30年ぶりに復活したということ。そうすると、地元の人も環境客も一緒になってふれあいや思い出が生まれる。

実行委員長の方の言葉が以下。

「やってくうちに、イベントと祭りは違うんだということや、主役は花火じゃなくて「人」だったんだとわかってきました。そうして見えてきた地元の暮らしや文化と観光の距離をいかにして縮めていくか。たとえば、民謡の歌い手が高齢化しているので松島生まれのジャズボーカリストが民謡を熱唱したり、世界中から来ている東北大学の留学生を招待して浴衣を着せて、地元のおばあちゃんたちが踊りを教えたり。松島でしか見られない、磨き込んだローカリティを広く世界に発信していくことが、これからのチャレンジかなと思います」(p111)

その他、神奈川の藤沢市ではヒップホップの最先端にいるミュージシャンが、即興性や韻を踏むことや地元のことを歌に取り入れるというところで共通点があるということで盆踊りに興味を示しているとか、音頭取りっていうのはプロもいる(いた?)とか、興味深い話もいろいろあった。

何の気なしに読んではいたけど、盆踊りの持つ広がりや可能性を感じる一冊やった。

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