2013年7月13日土曜日

「学級崩壊立て直し請負人」の取り組みは子どもだけでなく大人のコミュニケーションも立て直すことにつながる気がする

学級崩壊立て直し請負人: 大人と子どもで取り組む「言葉」教育革命

 NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも出演されていた、北九州市の小学校の先生の本。先日あるイベントで直接講演を聞く機会があって、話にとても感銘を受けて、その場で買った。

具体的かつ想いの詰まった内容で一気にひき込まれて読んだ。教育や子育てに関心のある方にはオススメしたい一冊。あとは、ビジネスの現場でのコミュニケーションに照らしても考えさせられることも多かった。


■教育現場の状況の非難や摘発ではない
内容としては、学級崩壊というシビアな現場での経験を元にした本やけど、本書の目的は、文句を言ったり嘆いたりすることではない。冒頭でも「教育現場の状況の非難や摘発にはありません」(p15)と述べられている。

子どもが普段長い時間を過ごす学級の場を立て直すために、現実を認識し、変えていくことの重要性が、具体的な例を通して語られている。


■言葉の力
方法論として一貫して大事にされているのが「言葉」。親が「バカ」「ダメ」と言ったネガティブな言葉を多用し、子どももそういう言葉を使ってコミュニケーションをとることで、先生や友達との関係性がうまく築けずに学級崩壊やいじめといった問題につながっている。

そこで、価値を感じられるようなポジティブな言葉によって子供のコミュニケーション能力を高め、考えや行動をプラスに導いていき、生徒同士や先生との関係性を変えて教室を変えていく。

具体的には、「ほめ言葉のシャワー」といって、帰りのホームルームで日直の子に対して、周りの生徒が次々に褒め言葉をかけていく活動や、先生と一対一で対話するための「成長ノート」という取り組みを行っている。

「ほめ言葉のシャワー」をやりだすと、褒められた子が今まで褒められたことがないと言って泣き出したりもするらしい。いかにポジティブな言葉が子どもに対してかけられていないかということを象徴している…


■自己紹介すらまともにできない子ども達
講演でも語られていたけど、著者に方が特に「コミュニケーション教育」に取り組むきっかけになったエピソードが驚きやった。年度の最初にクラスで自己紹介をさせたら、それだけで泣く生徒がたくさん出てきたという。自己紹介するだけでクラスメイトの目が怖くて泣く。いわんやクラスでのコミュニケーションも十分にとれない。

自己紹介と最初出てきた時は最初さらっと読んでたけど、これが結構奥が深い。

「自己紹介が必要な場、というのは自分のコミュニティとは違う場所に関わるということ。結局は自分の世界をどんどん広げていっているということなんです。公の世界にね」(p154)

こういう経験を積み重ねていれば自分の可能性が広がって自信も持てる。しかし、そういう経験を積んでいないと、
「六年一組の〇〇です。よろしくお願いします」
といったテンプレ的なことしか話せず、そこからの広がりが生まれにくい。

これって子どもの話として出てたけど、大人も一緒やよなーと思った…


■言葉で変わる
そうした中で、先述したような取り組みを、一気にではなく生徒達の様子を見ながら順次取り入れていき、次第に子供たちが変わっていく様子が具体的な事例を元に紹介されている。自己紹介もできなかったり、ネガティブな言葉をたくさん発していたり、まともに席にもついておられんかったような子供が、年度の最後の方では前向きに自分のことを堂々と表現していく過程を読むと結構ウルッと来る。

例えば、年度末に「なぜ、6年1組は話し合いが成立するのか」というテーマで成長ノートを書かせた時の答え。

「うらんだりをあまりしなくなったことです。私は反対意見などを出されたら前までは『なんあんだあいつー』みたいな考えたあったと思います。でも、今の自分は、『あっそっか……』とか、『うーん、……。違う気がするなぁ』みたいな考え方が持てるようになりました。だから私はうらんだりしないことによってみんな『あったかい話し合い』ができていると思います」(p112)

人の人格と意見を分離して、意見についてきちんと考えていっているけど、これは大人でもなかなかできてないと思う。会議とかでも紛糾しちゃったり根にもったりとか…子どもの教育の話なんやけど、結局は大人、そして日本社会の話なんやよなーと強く思った。


■「大人全体」の問題
その点と関連して、以下の点が強く印象に残った。

「親の情報不足が、余裕のなさを招く。だから、言葉の力がない。褒める力もない。
 言葉の力で公に進む。そして、いい言葉を獲得していくことが、人生を豊かにすることになるんだ。まずはそういう認識が大人にないものだから、ただ子どもに怒るだけになる。あるいは放任する。スタートはやっぱり、親。いや親を含めた"大人全体"ですよね」(p42)

これから子どもを育てていく親としても、一人の「大人」としても、「言葉の力」を改めて認識し、言葉を大切にして自分の周りからでもプラスの方向のコミュニケーションの循環を起こしていきたいと感じる一冊やった。

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