2013年1月17日木曜日

「カリスマ体育教師の常勝教育」はもしドラの現実版とも言える気もする

カリスマ体育教師の常勝教育

市立の中学校、それも荒れていた中学校に赴任してから陸上の部活動を通じた指導を徹底して学校を再生した体育教師の方の本。

指導の実績がスゴイ。陸上競技では、個人種目で13回の日本一。大阪府大会で12回連続の男子総合優勝、5回連続の男女総合優勝。

さらに、日本記録を予告して出す生徒も出すしたとのこと。それも著者の方曰く「普通の子」が成し遂げた記録。この過程を見た周りの人から、中学校の名前をとって「松虫の奇跡」と言われている。

教え子の方は卒業後も各界で活躍しているとのこと。また、このメソッドは企業でも取り入れられている。

本では、どういう発想、どういう手法で教育や指導を行なってきたかが説明されている。実際の指導で使ったシート等を始めとして具体的な手法も紹介されていて参考になる。


■マーケティングの発想を部活に
企業の活動とも通じる話がたくさんあった。例えば、日本一を達成するための差別化の戦略を立て、それを実行しているあたりの話はマーケティングと通じる。

具体的には、環境が整っていてすでに走るのが速い子どもと競争しても勝てる可能性は低い。それならということで、スタートで同じ土俵に立てるフィールド種目に集中し、日本一へ導く。

こうした発想の背景には、異業種から学んだ知識があり、そのきっかけは経営コンサルタントの方の勉強会。

「顧客の創造」「異業種から学べ」「深堀りして差別化をはかれ」というマネジメントの発想やテーマを学んだとのこと。

マネジメントといえばもしドラ。もしドラは小説やけど、この本に書かれている話は実際の話やからスゴイ。その他にも企業とも通じるポイントが幾つもあって参考になった。


■書くことへのこだわり
具体的な指導の中身の中で特に印象に残ったのが書くこと。技術の指導の前に「子どもたちの心を作る」ことが重視されているけど、そのベースになるのが書くこと。

まさか陸上の話で書くことが出てくるとは思わんかったけど、生徒は国語の授業より多く書き物の課題をやらされるらしい。書いたものは上級生や先生が徹底的に添削指導。

これは、自分の目標や行動を振り返ってまた次につなげていき、目標に近づくためのステップを生徒に身につけさせることにつながっている。

「もともと私は、書くことにこだわりがあり、「書くこと=文章化=思考」ととらえてきました。文章になった文字は、その人の考え、やる気、決意そのものです。そのため、長期目標設定用紙を使って未来の目標を定め、日々の目標と反省を日誌に書かせ続けました。子どもたちが書いた文字に赤ペンを入れて添削し、子どもに返す指導を繰り返したのです」(p41)

そして、書く量が、部活動の強さとも比例するようになってきたらしい。

「よく書ける子ほど強いのです。目標設定用紙の文字量、日誌の文字量、しっかりした文章を書けるということが競技力の向上につながってきたのです」(p61)

なぜ書くことが結果につながるかということは次のように説明されている。

「試合に備えて、目標をしっかりと設定し、過去の成功、失敗を分析する。そして心(メンタル)、体力、技の面で、何に注意をすればよいのかを整理する。それを細かく書き込ませて意識を高める。生徒は、自分で書いた必要なステップを、日々の生活で繰り返し繰り返し実践していく。そして、試合にのぞめば、予定どおりの結果が出せるようになったのです」(p41)

「書くというのはその人の思考そのものですから、頭の中が整理されて、意識が高まってきたら、気づきの能力も高まり、練習の質も上がる。その結果、競技成績も高まり、自己ベストや日本一を達成できるようになっていきました」(p61)

さらっと読んでしまうけど、実際にこれをやりきるのは指導する側もされる側も相当の努力と積み重ねが必要と思う。それをやりきるところがスゴイんやなーと思った。


■家庭のしつけ力の弱まり
上記とは違う確度で、教育関連のトピックの中で印象に残ったのが家庭でのしつけの力の弱まりの話。

体育の授業でも最初の三カ月くらいは態度教育に力を入れるとのこと。これはなぜかというと…

「あとから考察すると、態度教育を徹底した生徒は格段に指導の効果が高く、成績が伸びています。最初に心のコップを上に向けて人として学ぶ器をつくり、その後に牒まざまなノウハウを入れていけばいいわけです」(p106)

その背景としては家庭でのしつけ力の弱まりもある。

「教える側の真剣さを子どもたちが全力で受け止め、日々、確実に成長させるためには、話を莫剣に聞く態度が必要です。本来、それは「しつけ」として家庭で行われなければなりません。しかし、いまの家庭には「しつけ力」が足りない。二十歳をすぎてもまともな挨拶すらできない若者がゴロゴロいます。静と動の態度教育はそれを補う大切な指導でした。
 並行して、家庭での生活習慣も見直しました。家庭の教育力、しつけ力が弱いので、心づくり指導を徹底するうえで、家庭教育に踏み込まざるを得なかったのです」(p40)

また、次のようにも述べている。

「子どもの教育には、父性的な厳しさと母性的な優しさが、バランスよく発揮される必要があります。
 指導者はこのふたつをバランスよく発揮するか、もしくはそれぞれを発揮できる人を集めてきてグループで指導するのかどちらかです。ところが、最近の親や指導者は圧倒的に母性的な指導が中心です。
 母性主導の教育の果てにいまのような自由の意味をはき違えた若者の現状がある。教育のバランスが極めて悪いのです」(p178)

他にも、「面白さ」をはき違えていて、テレビ番組のお笑い芸人のように面白がってもらうことが良いというのは違うのではないかという話もあった。

一時は苦しくてもそれを乗り越えてやりきったところに本当の面白さがあるのではないか。そしてそれを経験させるためには時には厳しく我慢や忍耐をさせることが必要ではないかという趣旨。

このへんの話は子育てをしていく上でも頭に置いておきたいなーと思った。
これからの子育てや仕事の上でも参考になるポイントがたくさんある一冊やった。

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