2013年1月22日火曜日

プロフェッショナルとしての職業倫理意識の高さが描かれている「マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー」

マッキンゼーをつくった男 マービン・バウワー

マーケティングキャンパスのノヤン先生が紹介していたので読んでみたもの。マッキンゼーの発展に大きく貢献したマービン・バウワーという方についての本。評伝のような感じの形式をとっている。

経営コンサルティング業界読本のような内容ではないので、経営コンサルティング業界ってどんなところ?っていう問いへの直接的な答えにはならないけど、経営コンサルティングとは、プロフェッショナルとはどうあるべきかということが示されている内容。

特に職業倫理については、コンサルティングに携わっていなくても仕事人として参考になるポイントが多い。


■経営コンサルティングという職業のビジョン
経営コンサルティング業と言えば、特に外資系コンサルの会社は今や学生の就職先として人気やけど、マービン・バウワーさんが入られた頃はそもそも経営コンサルティングという職業が確立していなかった。

顧客からも当初は海のものとも山のものともしれないような形で見られていた。その中で、どういったビジョンをもって、どのような職業規範を確立していったかが描かれている。

マービン・バウワーさんは、経営コンサルティングという職業のビジョンについて明確な言葉を使って繰り返しスタッフに話しかけたとのこと。

例えば、次のような言葉。

「この新しい職業を定義しイメージをつくるのは、私たち自身の言葉である。私たちが働くのは、モノやサービスの買い手であるカスタマーのためではない。依頼人であるクライアントのためだ。マッキンゼーは会社ではない。プロフェッショナル・ファームである。マッキンゼーには社員はいない。いるのはメンバーであり、個人の尊厳を持って働く同僚である。私たちに事業計画はない。あるのは大志である。私たちは規則ではなく価値を重んじる。私たちは経営コンサルタントであり、それ以外の何ものでもない。私たち自身が経営や起業に手を染めることはなく、ヘッドハンティングもしない。マッキンゼーが経営コンサルティングに専念する重大な決定を下したのは、一九三九年、スコービル・ウェリントン&カンパニーとの提携を打ち切ったときである。このときから私たちはマネジメント・エンジニアを名乗るのをやめ、経営コンサルタントという新しい名称を使うようになった。そしてこのときから、他の仕事の誘惑をすべて断ち切ってきた。経営コンサルティングに徹するという私たちの信念はファームに深く根づき息づいている」
(p36-37)

やるべきこと、やるべきでないことが明確な言葉で語られている。このビジョンに反することは、例え多くの利益を生むことであっても関わらないという方針を徹底させていたということ。


■ビジョンを書いて、話して、伝える
こうしたビジョンを話すことに加え、書いて明確に示していたということ。マッキンゼーの卒業生であるギャリー・マクドゥガルという方が次のように述べている。

「口で言うだけでなく、書いて明確に示すのが大事だということはマービンから教わった。何かを口に出し、取り巻きの賛同を得られるとそれで満足してしまう経営者がいるが、それは大きな誤りだ。マッキンゼーでは、マービンがブルーのメモをよく書いていた」(p244)

この「ブルーのメモ」というのは、マービン・バウワーさん用のメモで、みんなこのメモは重視していたらしい。

また、直接の対話を重視していたことも述べられている。

「トレーニング・プログラムでも講師を務めていたし、世界のあちこちを飛び回り、現地のオフィスに必ず顔を出していた。私も彼のやり方に倣った。シンガポールでも、スコットランドでも、どこでも、必ずビールとピザでミーティングをした。工場、営業、管理職がわけへだてなく話し合うクロス・セッションだ。膝を交えて話した相手には、あとで必ず二一百書き送った。何かあったときに「あなたはどう思うか」と聞ける相手を増やす。対話の輪を広げることに努めた。
 対話というものは、双方向でなければならない。自由に自分の意見を言える雰囲気をつくるために、意識調査も行った。モラルの問題も含め、匿名で答えてもらう。自分の考えを自由に言っていいし、経営幹部がそれをまじめに受け取ったとわかってもらえるように、あらゆる手段を講じた」(p244)

本の中では、こうした例の他にも様々な例が挙げられていて、いかにしてビジョンや方針を浸透させていったかということが描かれている。

コンサルティングの手法どうこうという内容を期待している人には期待はずれかもしれないけど、仕事に向き合う姿勢、職業倫理、経営方針やビジョンの浸透といったことに関心がある人にとっては参考になるところが多い一冊やと思った。

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