もっとおもしろくても理科 (講談社文庫)
小説家の著者が書いた科学解説まがい(著者自身も「まがい」と言っているw)のエッセイ集。たまたま借りて読んだんやけど、どうも前作があってその続編にあたるらしい。
ただ、元々は雑誌連載だし、基本的に1章ずつ完結するので前のものを読んでなくても別に支障はなかった。
科学の話とは言え、語り口は軽い感じだし、そもそも挿絵が西原理恵子さんということもあって肩肘はらずに読める。特に、挿絵は内容とほとんど関係なくて、西原さんが描きたいように描いてる感じで面白く良い息抜きになった。
■科学をもっと面白がりましょうよという著者の想い
内容は、最初は進化、次に、生物と非生物の分かれ目、動物と植物の分かれ目、男と女の分かれ目という形でなんとなく順を追ってつながったテーマになっている。しかしその後は著者自身も語っているように脱線し始め、その次はいきなりロケットの話になる。
ロケットの原理が考えられたのは1903年でこれはライト兄弟が飛行機を発明したのを同じ年らしい。原理だけとは言え飛行機が発明された頃にすでにロケットのことが考えられていたとは知らんかったけど興味深い。
その後、原子とかビッグバンとか遺伝子とかの話になっていって、ビッグバンや遺伝子のところあたりは著者自身も消化不良な感じで説明を読んでいてもあまりすっきりする感じではなかった。ただ、なんとか科学や理科と言われる分野の話を面白く伝えようとする著者の姿勢は伝わってきた。
本編のエッセイの方ではいろいろふざけた感じで書いてあるけど、「あとがき」に著者の想いが述べられていた。この文章が書かれたのは1990年代やけど、すでに科学に完全に背を向けて生きていくのは難しい時代になっている。しかし、専門書を読もうとするとハードルが高く、難しくて理解が中々及ばない。
そうした時代にあって「わかる側とわからない側のかけ橋であることをめざして」(p262)書かれたのが本書。理科系の詳しい人からは間違いに対するツッコミや批判を受けることを覚悟しつつ、科学に背を向けている人に対して「楽しんでしまいましょうよ、科学を」(p262)と呼びかけるための試みの一つとして著されたということ。本書のタイトルにもその姿勢があらわされていて、「科学」ではなく「理科」という言い方をしている。
逆に、理科系の人にもメッセージを発していて、「科学も、人間を離れてしまってはつまらないことです」(p262)という信号を発したつもりだということ。
総じて、人間と科学(理科)はもっと面白いものだし興味を持ってちょっと楽しんでみませんか?という著者の投げかけが伝わってきた。
■白黒ハッキリ分かれるもんではない
内容の中で1つ面白かったのが「男と女の分岐点」というテーマでの話。
「性のあり方は、非常に様々である。いつでも必ずきっぱりと、ぼく男の子、わたし女の子、と分かれるとは限らないのだ」(p86)
そもそも有性生殖で性が分かれる生殖は1つのタイプでしかない。植物含めそういう生物が多いは多いが、必ずしもそうではない生物もいる。また、性があるとしても、決定的なものではなくコロコロ性転換する生物もいる。
人間の場合も男性と女性にきれいに分かれるわけではなく、いろんな中間型がある。ホルモンの分泌度合いによって変わってくる。本書では、平凡社の「世界大百科事典」の以下の記述をひいている。
「男女の性別は分離されておらず、すそ野のつながった双子山のような連続的なものとなっている」(p103)
これを受けて、著者は次のように述べている。
「人間は、まぎれもない百パーセント男と、まぎれもない百パーセント女、に分かれているわけではないのだ。
かなり男、とか、くっきり男、とか、おおむね男、なんていうふうに、ぶれがあるのだ。女についても同じことである」(p103)
そして、このエッセイ(?)の面白いところなんやけどこう続く。
「サイバラがあのような女性であることも、別におかしなことではなかったのだ。大いにバクチで人生わやにしてくれたまえ」(p103)
こういう感じで西原さんとのかけあいが入ってくるので読みやすい。
性差の話は、あんまり深入りするとジェンダー論みたいになって難しくなりそうやけど、こういうふうに白黒ハッキリ分かれるものではないという話は改めて読んでみると興味深かった。
性差に限らず、世の中のことって、人間関係のことでも仕事のことでもいろんなものにラベルを貼って、あれは〇〇、これは××ときれいに分けようとしてしまいがちやけど、そんなにきれいに分かれるものばっかりでもない。
そしてそれは科学や生物の分野の話でも同じということがこの話からも分かる。白黒つけた方が一見楽な感じがするし、分かりやすいんやけど、そうすると抜け落ちるものがある。ただ、概念的には分けた方がシンプルで分かりやすい。その狭間でどう考えていくか、これは結構難しいけど興味深い問題やなーと思った。
なんとなく、「世界は分けても分からない」という本のタイトルを思い出した一冊やった。
小説家の著者が書いた科学解説まがい(著者自身も「まがい」と言っているw)のエッセイ集。たまたま借りて読んだんやけど、どうも前作があってその続編にあたるらしい。
ただ、元々は雑誌連載だし、基本的に1章ずつ完結するので前のものを読んでなくても別に支障はなかった。
科学の話とは言え、語り口は軽い感じだし、そもそも挿絵が西原理恵子さんということもあって肩肘はらずに読める。特に、挿絵は内容とほとんど関係なくて、西原さんが描きたいように描いてる感じで面白く良い息抜きになった。
■科学をもっと面白がりましょうよという著者の想い
内容は、最初は進化、次に、生物と非生物の分かれ目、動物と植物の分かれ目、男と女の分かれ目という形でなんとなく順を追ってつながったテーマになっている。しかしその後は著者自身も語っているように脱線し始め、その次はいきなりロケットの話になる。
ロケットの原理が考えられたのは1903年でこれはライト兄弟が飛行機を発明したのを同じ年らしい。原理だけとは言え飛行機が発明された頃にすでにロケットのことが考えられていたとは知らんかったけど興味深い。
その後、原子とかビッグバンとか遺伝子とかの話になっていって、ビッグバンや遺伝子のところあたりは著者自身も消化不良な感じで説明を読んでいてもあまりすっきりする感じではなかった。ただ、なんとか科学や理科と言われる分野の話を面白く伝えようとする著者の姿勢は伝わってきた。
本編のエッセイの方ではいろいろふざけた感じで書いてあるけど、「あとがき」に著者の想いが述べられていた。この文章が書かれたのは1990年代やけど、すでに科学に完全に背を向けて生きていくのは難しい時代になっている。しかし、専門書を読もうとするとハードルが高く、難しくて理解が中々及ばない。
そうした時代にあって「わかる側とわからない側のかけ橋であることをめざして」(p262)書かれたのが本書。理科系の詳しい人からは間違いに対するツッコミや批判を受けることを覚悟しつつ、科学に背を向けている人に対して「楽しんでしまいましょうよ、科学を」(p262)と呼びかけるための試みの一つとして著されたということ。本書のタイトルにもその姿勢があらわされていて、「科学」ではなく「理科」という言い方をしている。
逆に、理科系の人にもメッセージを発していて、「科学も、人間を離れてしまってはつまらないことです」(p262)という信号を発したつもりだということ。
総じて、人間と科学(理科)はもっと面白いものだし興味を持ってちょっと楽しんでみませんか?という著者の投げかけが伝わってきた。
■白黒ハッキリ分かれるもんではない
内容の中で1つ面白かったのが「男と女の分岐点」というテーマでの話。
「性のあり方は、非常に様々である。いつでも必ずきっぱりと、ぼく男の子、わたし女の子、と分かれるとは限らないのだ」(p86)
そもそも有性生殖で性が分かれる生殖は1つのタイプでしかない。植物含めそういう生物が多いは多いが、必ずしもそうではない生物もいる。また、性があるとしても、決定的なものではなくコロコロ性転換する生物もいる。
人間の場合も男性と女性にきれいに分かれるわけではなく、いろんな中間型がある。ホルモンの分泌度合いによって変わってくる。本書では、平凡社の「世界大百科事典」の以下の記述をひいている。
「男女の性別は分離されておらず、すそ野のつながった双子山のような連続的なものとなっている」(p103)
これを受けて、著者は次のように述べている。
「人間は、まぎれもない百パーセント男と、まぎれもない百パーセント女、に分かれているわけではないのだ。
かなり男、とか、くっきり男、とか、おおむね男、なんていうふうに、ぶれがあるのだ。女についても同じことである」(p103)
そして、このエッセイ(?)の面白いところなんやけどこう続く。
「サイバラがあのような女性であることも、別におかしなことではなかったのだ。大いにバクチで人生わやにしてくれたまえ」(p103)
こういう感じで西原さんとのかけあいが入ってくるので読みやすい。
性差の話は、あんまり深入りするとジェンダー論みたいになって難しくなりそうやけど、こういうふうに白黒ハッキリ分かれるものではないという話は改めて読んでみると興味深かった。
性差に限らず、世の中のことって、人間関係のことでも仕事のことでもいろんなものにラベルを貼って、あれは〇〇、これは××ときれいに分けようとしてしまいがちやけど、そんなにきれいに分かれるものばっかりでもない。
そしてそれは科学や生物の分野の話でも同じということがこの話からも分かる。白黒つけた方が一見楽な感じがするし、分かりやすいんやけど、そうすると抜け落ちるものがある。ただ、概念的には分けた方がシンプルで分かりやすい。その狭間でどう考えていくか、これは結構難しいけど興味深い問題やなーと思った。
なんとなく、「世界は分けても分からない」という本のタイトルを思い出した一冊やった。
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