日本一心を揺るがす新聞の社説―それは朝日でも毎日でも読売でもなかった
みやざき中央新聞という新聞の社説集。1000本近い社説から珠玉の41本が本書に詰まっている。
社説の内容は、普通の社説とは違っていて、編集長の方がいろんな講演会や本、映画等から得た情報を元に書かれている。単純に仕事観や人生観として参考になる言葉も多いし、心揺さぶられる話も入っている。
■情報は、「報」の上に「情け」を乗せている
ただ、「お宅の新聞の社説、ありゃ社説じゃないよ。哲学がない」と大学の先生から酷評されてしまうように、大手の新聞社の社説のようなきちっとした感じのものではない。
しかし、「情報とは情感を刺激するものだから「情報」」(p6)であり、知ることではなく感じることが大事であるという考えの元につむがれているので、そういう格調高い社説よりも訴えかけてくるものが大きい。
その想いは、次の一節にもあらわれている。
「情報は、報道の「報」の上に「情け」を乗せている。「情け」とは人間味のある心、思いやり、優しさ。情報は常に「情け」を乗せて発信したい。
ジャーナリズムは「知」ではなく「情」を愛する媒体でいいと思う。」(p7)
■仕事ってこれなんだなぁ
とても心に残った話が複数あったけど、その中から仕事についての話を1つ紹介。
「Aさんは、自分の事務所の近くに駐車場を借りていた。その駐車場には初老の管理人がいた。定年退職後、その駐車場の管理人として働き始めたそうだ。
Aさんが駐車場を利用する度に、そのおじさんはいつも明るい笑顔で「おはようございます。今日もいい天気ですね」と声を掛けてくる。
ある日のこと、移動の途中で雨が降り出し、駐車場に車を入れた後、車から出られず困っていた。するとそこへおじさんがやってきて、「傘、忘れたんでしょ。これ持っていきない」と貸してくれた。
満車のとき、「満車」と書いた大きな看板を入り口に置いておくのが普通の駐車場だが、そのおじさんは満車になると、入り口に立って、入ろうとするドライバー一人ひとりに「申し訳ありません。満車です」と頭を下げた。クレームを言う客がいると、その事が見えなくなるまで頭を下げ、見送っていた。それを見ながらAさんは、「そこまでしなくてもいいのに…」と思っていた。
ある日、車を止めてあいさつをすると、おじさんは「今週いっぱいで辞めます。いろいろお世話になりました」と言う。奥さんが病気になったらしい。
残念に思いながら、最後の日、Aさんは感謝の気持ちを込めて手土産を持っていった。そして駐車場に着いたとき、Aさんは信じられない光景を見たのだった。
小さなプレハブの管理人室の周りがたくさんの人で溢れていたのだ。そして管理人室の中も外も、たくさんの手土産や花束でいっぱいだった。一人ひとりがおじさんにお礼を言ったり、握手したり、写真を撮ったりしていた。
Aさんは、「仕事ってこれなんだなあ」 って教えられたという。」
(p60-61)
みやざき中央新聞という新聞の社説集。1000本近い社説から珠玉の41本が本書に詰まっている。
社説の内容は、普通の社説とは違っていて、編集長の方がいろんな講演会や本、映画等から得た情報を元に書かれている。単純に仕事観や人生観として参考になる言葉も多いし、心揺さぶられる話も入っている。
■情報は、「報」の上に「情け」を乗せている
ただ、「お宅の新聞の社説、ありゃ社説じゃないよ。哲学がない」と大学の先生から酷評されてしまうように、大手の新聞社の社説のようなきちっとした感じのものではない。
しかし、「情報とは情感を刺激するものだから「情報」」(p6)であり、知ることではなく感じることが大事であるという考えの元につむがれているので、そういう格調高い社説よりも訴えかけてくるものが大きい。
その想いは、次の一節にもあらわれている。
「情報は、報道の「報」の上に「情け」を乗せている。「情け」とは人間味のある心、思いやり、優しさ。情報は常に「情け」を乗せて発信したい。
ジャーナリズムは「知」ではなく「情」を愛する媒体でいいと思う。」(p7)
■仕事ってこれなんだなぁ
とても心に残った話が複数あったけど、その中から仕事についての話を1つ紹介。
「Aさんは、自分の事務所の近くに駐車場を借りていた。その駐車場には初老の管理人がいた。定年退職後、その駐車場の管理人として働き始めたそうだ。
Aさんが駐車場を利用する度に、そのおじさんはいつも明るい笑顔で「おはようございます。今日もいい天気ですね」と声を掛けてくる。
ある日のこと、移動の途中で雨が降り出し、駐車場に車を入れた後、車から出られず困っていた。するとそこへおじさんがやってきて、「傘、忘れたんでしょ。これ持っていきない」と貸してくれた。
満車のとき、「満車」と書いた大きな看板を入り口に置いておくのが普通の駐車場だが、そのおじさんは満車になると、入り口に立って、入ろうとするドライバー一人ひとりに「申し訳ありません。満車です」と頭を下げた。クレームを言う客がいると、その事が見えなくなるまで頭を下げ、見送っていた。それを見ながらAさんは、「そこまでしなくてもいいのに…」と思っていた。
ある日、車を止めてあいさつをすると、おじさんは「今週いっぱいで辞めます。いろいろお世話になりました」と言う。奥さんが病気になったらしい。
残念に思いながら、最後の日、Aさんは感謝の気持ちを込めて手土産を持っていった。そして駐車場に着いたとき、Aさんは信じられない光景を見たのだった。
小さなプレハブの管理人室の周りがたくさんの人で溢れていたのだ。そして管理人室の中も外も、たくさんの手土産や花束でいっぱいだった。一人ひとりがおじさんにお礼を言ったり、握手したり、写真を撮ったりしていた。
Aさんは、「仕事ってこれなんだなあ」 って教えられたという。」
(p60-61)
こういう仕事や生き方ができるようにしていきたいなーと思った一冊やった。
あと、地元宮崎からこういう新聞が発信されていることは嬉しいし、誇りに思える。