2013年4月3日水曜日

「ユニクロ帝国の光と影」で物事には両面あるよなーということを再認識

ユニクロ帝国の光と影

ユニクロについて、目ざましい成長ぶりといった光の部分だけでなく、影の部分にも焦点を当てて整理した本。独自の取材を元に、「一勝九敗」や「成功は一日で捨て去れ」等の柳井さん自身による説明内容と、現場での声を照らしあわせて実態をレポートしている。

内容としては、柳井さん個人の生い立ちや家族関係、お父さんがやられていた商売の話から、ユニクロの発展やSPAという業態の構造、店舗や工場の現場、ライバル視しているZARAのやり方など多面的な角度から描かれている。


■ユニクロ礼賛の公式発表ではないレポート
「ほとんどの雑誌記事や書籍が、ユニクロ側のお膳立てによって書かれた、いわば公式発表」(p20)であり、「ユニクロにとって書かれたくないことも含めて調査をするという姿勢に立って書かれた記事は皆無」(p20)ということから、書かれたくないであろうことも含めて調査して報告するというのが著者の意図の模様。

このためか、光と影ではどちらかというと影の部分の方に焦点が当たっている気がするけど、誹謗中傷という感じではなく、取材にもとづいた情報をベースに整理しようとしている。例えば、工場の取材での声では、条件が厳しく労働環境も大変というネガティブな話の一方、クリーンで誠実な取引だというポジティブな話も紹介している。

影の部分にやや寄っているのは、最近のユニクロについての話は成功の話が多いことを踏まえて意識的にそういう構成にしてバランスをとろうとしたのかもしれんなーとも思う。


■「鉄の統率」による成功
「一勝九敗」を読んで、すごいなーと思っていた部分について、この本を読むと実はそんなに良いことばかりじゃないんやなーということが分かった。例えば、柳井さんの本では自律型の店舗運営の重要性が説かれるけど、実際にはマニュアル化されている内容から外れることは難しい。「鉄の統率」が保たれているという。

また、元社員の声として以下のような言葉が紹介されていた。

「ユニクロにはオリジナルのコンセプトというものがない。言い換えれば、洋服を作る上での本質がない。ユニクロのヒット商品である、フリース、ヒートテック、ブラトップとつなげてみても、どういう洋服を作りたい企業なのかさっぱり見えてこない。ユニクロで働いているときは、いつも"一流のニセモノ"を作っているという気持ちから逃れることができなかった。それでも、ユニクロが日本のアパレル業界で圧倒的な強さを維持しているのは、生産管理や工程などについての細かな決めごとを徹底的に実行しているからだ」(p56)

この方は「オリジナルのコンセプト」みたいなものを重視しているみたいやけど、そもそも柳井さんが目指されているのはそれと違うところなんやないかなーとも感じた。それでもなおすごい会社であることは違いないと思う。

よく言われる話やけど、優れた戦略で実行が不徹底であるよりも、凡庸な戦略でも徹底的に実行して完遂していく方が結果的には成果が出るということを考えると、「鉄の統率」であれ何であれこれだけ徹底させるのはすごいと思う。逆に言えばこのくらいやらなければあれだけの成長はできないのかもなーとも思った。

もちろん、この本の取材先で語られていることもそちら側からの見方であることは頭に入れておく必要がある。ただ、光一辺倒ではなくて、影の部分も含めて総合的に見る方がより本質をつかめるのかなと思った。

当たり前のことなんやけど、光があれば影があるし、影があれば光がある。その両面を見るというものの見方を学ぶ上でも読んでおいて良い一冊やと思った。

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