2013年3月30日土曜日

「サムスンの真実」から人間のあり方や仕事について考え直す

サムスンの真実

特捜検事からサムスングループに入ったという異色の経歴を持つ著者が、自身が行った「良心の告白」と呼ばれる内部告発について記した本。

サムスングループの躍進は目ざましいけど、その裏で数々の違法行為が行われていたという話。具体的には、組織的な裏金づくり、贈賄、脱税、会計操作、ロビー活動、経営権継承のための違法行為等々…

もちろん、この本の内容がすべて真実かどうかはいろいろと考えたり検証する必要があるとは思うけど、内容の記述は非常に具体的で詳細。こういうことが行われているとすると、ホントすさまじい。検察からメディアから政府からすべてつながっていて不正の構造に組み込まれている…

また、組織内では「半導体技術者」や「携帯電話技術者」よりも「裏金技術者」や「ロビー活動技術者」の方が上に位置するようになっていることも述べられている。その他、監視と盗聴は日常茶飯事とか、裏側の話が具体例とともに多数あげられている。

ただ、単なる暴露本として書いたのではなく、以下のような想いをもとに書かれたよう。

「子どもたちに「正直に生きろ」と勧めても不安で無い社会になったらいい。「正直者は損をする」という考えが賢明とされ、「損をしたとしても正直でなければならない」という考えは純情で愚かなことだと見なされる社会で、「正直に生きなければならない」と教わった子どもたちが育つ姿を見守っていける自信はとてもない」(p380)

なお、管理体制や違法行為についての詳細はこちらのブログ記事とかでも整理されている↓
(以下の記事ではフィギュアスケートの話もからめて書かれている)



■なぜこの状態で成り立つのか
しかし、この通りやとした時に、それでも成り立っているというのは何でなんやろうという気がする。この本で書かれているような内容がずっと続いているとすると、どこかで企業体としての限界が来て組織としてもたなくなると思うし成功は続かないと思うんやけど、何でもつんやろ…

弊害が大きくても総帥中心の船団式経営で決定をスピーディーに行い、統制のとれた形で徹底して効率的に実行していくことのメリットもある一方、その弊害も大きい。この本では弊害の方に焦点があてられているけど、今まではメリットの方がうまく回っていたということなのかな…そのあたりは気になるので、今後また何か読んでみたい。


■組織の中での人間のあり方
著者自身は法を守る立場から法を犯す立場に移ったことから、非常にストレスがかかっていたということが述べられている。組織の論理と自分の倫理観が合わない時にどう考え、行動をとっていくのかという問題は、程度問題はあるにしても誰でも経験し得る可能性があるものなので、そういう観点からも考えさせられる。

また、著者は、日本の検察は清浄なのに対して韓国ではひどいといった形で日本の検察を美化しているけど、そうとは限らないと思う(ちょうど先日堀江さんが出所されてたけど)。

また、財閥の影響力というのも韓国ほどではないとしても日本にも通じる話だと思うので、そういう面からも考えさせられる内容。

監修者の方も次のように述べている。
「サムスンを考えることは、グローバル化した企業と社会、そして、その中で生きる人間のあり方を考えることにつながる。それは韓国の問題にとどまらず、日本の問題を考えることにも通じる」(p7)


■苦しい時こそ助ける
1つ印象に残った話。「良心の告白」以降、いろんな人から非難を受けたり、近くにいた人が離れていったりする中で力になってくれている友人の言葉がカッコいい。
「お前がうまくいっている時は近くに大勢の人がいたが、今は誰もいないようだ。せめて俺ぐらい来てやらなきゃいけないだろ」(p29)

こういうことを言えて実践できる人になりたいなーと思った。上でも書いているように、人としてのあり方や仕事について考えさせられる一冊やった。

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