2013年3月23日土曜日

「子どもの宇宙」で子どものファンタジーを受け入れることとそこから自分について考えていくことの重要性を再認識

子どもの宇宙 (岩波新書)

子どもの中に広がっている宇宙の広がりについて、いくつかのテーマごとにひもといていく内容。宇宙というと分かりづらいかもしらんのでもう少しくだいて言うと、子どもの目線から世界がどう見えているのかを、子どもの言葉や児童小説の世界観をもとに解説している。

章立ては以下のようになっていて、各章でタイトルに入っているテーマが扱われている。


  • 子どもと家族
  • 子どもと秘密
  • 子どもと動物
  • 子どもと時空
  • 子どもと老人
  • 子どもと死
  • 子どもと異性


上記のような内容から、子どもの中の宇宙の広がりを見つめ直すことができる内容になっている。児童小説の内容をからめた紹介も多く、そうした作品の持つ意味もあわせて考えさせられた。


■大人になること
子どもの宇宙について、「はじめに」の中で著者が述べている内容が印象的。

「大人になるということは、子どものときにもっていた素晴らしい宇宙の存在を忘れる事ではないか、と先に述べた。実際、われわれ大人もそのなかにそれぞれが宇宙をもっているのだ。しかし、おとなは目先の現実、つまり、月給がどのくらいか、とか、どうしたら地位があがるか、とかに心を奪われるので、自分のなかの宇宙のことなど忘れてしまうのである。そして、その存在に気づくことには、あんがい恐怖や不安がつきまとったりもするようである。
 大人はそのような不安に襲われるのを避けるために、子どもの宇宙の存在を無視したり、それを破壊しようとするのかも知れない。従って、その逆に子どもの宇宙の存在について、われわれが知ろうと努力するときは、自分自身の宇宙について忘れたことを思い出したり、新しい発見をしたりすることにもなる。子どもの宇宙への探索は、おのずから自己の世界への探索につながってくるのである」(p8)

読み始めでこの文章を読んだ時はそういうもんかなーと思ってさらっと読んだけど、読み終わって改めてこの文章を読むと、確かになーと思った。


■子どものファンタジーを受け入れる
また、子どもの診療の話もいくつか紹介されていたけど、その中で、想像力豊かな子どものファンタジーが抑え込まれていたことにより、知能面では問題ないのに学校での成績が悪い例とかが紹介されていた。

このケースでは、箱庭療法を通じて子どもの世界観を表現してもらったりしつつ、母親の方に子どものファンタジーを受けれいれてもらうことで試験での失敗が自然に消滅していったとのこと。

その他の例も読みながら、子どもの中にはいろんな世界が広がっていて、また、子どもは本当にセンシティブでおとなの何気ない一言二言からいろんなことを感じ取っているということを改めて認識した。これから子どもを育てていくにあたって心に留めておきたい。

あと、これに関連して面白かったのが「おとな」というタイトルの詩。


 おとな
          中谷 実
 だれか人がくると
 ぼくを見て
 「大きなりはったね」
 「もう何年生です」
 「こんど三年」
 「そう早いもんね、
  こないだ一年生やと
  思っていたのに」
 といってあたまをなでてくれる
 おとなは
 みんなおなじことをいう

(p4)

自分も子どもの頃に似たようなこと思ってたけど、今度は逆に、子どもに接すると似たようなことを言ってしまいそうな気がする。うーん、ホントこのへんは気をつけんとなーと思った。


自分が子どもだった頃の話を思い返すだけでなく、今、自分の中にあるものと子どもの中にある豊かさとを比べてみてどうなのか、とか「子どもの目」見た時に思いがけないことが見えてくるなーでといったことも考えたりしながら読んだ。

初版は1987年やけど自分が呼んだのは2006年発行の第38刷。良い内容で、さすが読み継がれるだけのことはあるなーと思った一冊やった。

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