2013年3月11日月曜日

「世紀末の隣人」が起こした社会事件と自分の10代を振り返る

世紀末の隣人 (講談社文庫)

自らを「読み物作家」と位置づけている著者による「寄り道・無駄足ノンフィクション」。ノンフィクションといったときにイメージするような、「追跡」や「速さ」を追求して現場にどんどん切り込んでいって取材するという感じではない。

社会の動きを象徴するような12の事件をとりあげてそれぞれを「読み物」として書き綴っている。

扱われている事件は通り魔事件や幼女殺人、少女監禁、カレーへのヒ素混入事件などの事件に加え、リストラや田舎移住、ニュータウン、アイボや東京という都市など、社会の動きを踏まえたテーマも。


■「わからない」を「わかる」ための文章
書かれているタイミングとしては、リアルタイムのものというよりは、お祭り騒ぎが終わってから少し経ってからのものが多い。

その分、当時の事件や状況について、著者なりの見方を付け加えている。その内容について本人は「蛇足」と言っているように、パッと見意味があるんだかないんだか分からないような感じで、スッキリするような内容ではない。

でも、だからこその意味がある。とりあげられている事件の多くは、メディアによって単純明快な説明がなされていてわかりやすかったけど、もう少し中身を見ていくとそうそう単純に割り切れるものばかりではない。

解説で著者の言葉が引用されているが、そこでは以下のように語られている。
「『わからない』を『わかる』ための文章が書ければいいな、と思っている」(p286)

解説では、「わからない」を「わかった気にさせない」ために「寄り道芸」や「無駄足芸」が必要になり、そこに著者の体験や手法が有効に活かされていると述べられていてなるほどと思った。

あえてわかりやすさを放棄することでその分本質に近づいているような気がする。


■キレる17歳と言われた世代として感じたこと
しかし、バスジャックの事件をはじめとする17歳前後の少年少女による犯罪が起きた時に、キレる17歳とかって言われてたけど、ちょうど自分達の学年は同世代やったのを思い出した。

本書でも雑誌の見出しが紹介されている。例えば…

  • 「17歳「大人」への宣戦布告!」
  • 「総力特集 まじめで勉強できる子が危ない」
  • 「総力取材!17歳少年たち「残忍殺人」の異常背景」

当時は「ひとまとめにすんなよなー」とも思いつつ、「でも自分にもそういう要素があるかもしれない」とも思っていたような気がする。報道のされ方に違和感を感じつつも全否定はできないみたいな。

なんかこう、世の中から圧迫されているような感じはあったかもしれない(なかったかもしれんけど)。

この本で扱われているトピックには、他にも自分が中高生の時代に話題になった事件等についてのものが多かったけど、こういう報道が自分たちの社会感覚にどういう影響を及ぼしているのか自分でも振り返りつつ、今度同世代の友達と話す時に語ってみようかなーと思った。

20世紀末の社会の雰囲気やその時の社会に対する見方を振り返るのに良い一冊やと思った。

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