空の上で本当にあった心温まる物語
ANAの飛行機に乗ったお客さんや、お客さんとキャビンアテンダントの方とのふれあいについてのエピソード集。
キャビンアテンダントの方が機上でどのように考え、行動しているのかということが分かる。特に、サービス精神、おもてなしの心というのがキーワードで、感動系の話が中心。
いわゆる「イイ話」を集めたもので、読み方によっては鼻につくようなところもあるかもしらんけど、素直に読めば素直にイイ話として読めるし明るい気持ちになれる。
著者は、ANAのチーフパーサーを務めた後、ANAのグループ会社で研修の講師をされている方。この方は茶道をやられているとのことで、おもてなしの心について茶道の精神をベースに解説されていてそれも結構面白かった。
■ドリンクの出し方
印象に残ったエピソードはいくつかあるけど、その中で特にドリンクの出し方についての話が心に残った。
まず、急いで乗り込んできてお腹が減っていたので、離陸前にテーブルを出して急いでお弁当を食べていたら、キャビンアテンダントの方から声をかけられたという話。
注意されるのかなと思ったら、「上空に参りましたら熱い日本茶をお持ちいたします」とぬるい日本茶を持ってきてくれて、その上で「離陸までにはテーブルを元の位置にお戻しください」と一声かけられたとのこと。
これは、通常のドリンクサービスで提供しているような熱いお茶を持って来ると、離陸までにすぐに飲み干すことができないので、わざわざぬるいお茶を持っていったという。単に温めるのが間に合わなかったのかなーと思っていたのでその気遣いには
もう1つ、搭乗するのがギリギリになって、走って乗り込んできた方の話。怒られるかと思いきや、係員の方は「頑張りましょう」と励ましながら荷物を1つ持って一緒に走ってくれ、乗り込んだ後も丁寧に案内される。
そして、ようやく席についたら、「お客様、お急ぎくださいましてありがとうございます。よろしければ、冷たいお水をお持ちいたしましたので、どうぞ」とすっと紙コップを渡され、ゴクゴク飲み干して一息つけ、不機嫌だった周りの乗客の人まで感心したという。
ドリンクにまつわる話は他にもあったけど、ドリンクの出し方一つとっても、出すタイミングやどういう状態で出すかといったことに心が配られているんやなーと感心した。
■泣きやまない赤ちゃん
あと、最初の方にあったエピソードで、なかなか泣きやまない赤ちゃんを乗客の60代くらいの女性の方が抱いて子守唄を歌って寝かしつけてくれたという話があった。歌を歌い始めてすぐは赤ちゃんは泣き続けていたけど、周囲の不機嫌そうな空気が和やかな空気になったという。
気がつくと赤ちゃんはすやすや眠っていて、以下のような言葉を残して席に戻っていったという。
「いいかい。こうやって自分の心臓の音を赤ちゃんに聞かせるの。胎児だった時に聞いた音だから赤ちゃんが安心するのよ。抱いている人の心が赤ちゃんに伝わるの。
だからね、こういう時は、まずゆったり自分の心を落ち着かせることが大切なのよ」(p25)
カッコイー!と思った。この話の解説で、著者の方は以下のように述べている。
「誰かが困っている、そんな時は、自分にも何か手助けできることがあるはずだ、そう考えてみませんか。
直接、手を出さなくても、間接的なことでもいいのです。
このおばあちゃんのように子守唄を歌うことはできなくても、迷惑そうな顔をしないとか、舌打ちをしないとか。
そうすることで、機内の雰囲気が悪くなることもありませんし、お母さんも追い詰められることなく、赤ちゃんに向き合うことができます。
些細なことであっても、何かしたい、そう思って実行できたら素敵です」(p26)
これはその通りやなーと思った。赤ちゃんの泣き声が迷惑で飛行機会社にクレームをつけた人の話とかが最近話題になってたけど、そういう考え方ではなくて、上のような考え方をとれるともっと良い雰囲気になるのになーと思った。
■Good-by Wave
もう一つ、整備士が手を振りながらお客さんを見送るのは実は沖縄出身で沖縄空港支店整備課で仕事をしていた整備士の方が自発的に始めたサービスだという話は印象に残った。
その方の後輩が、いつも出発する飛行機に向かって最後まで手を振っていることに気づいて、「どうしていつも出発する飛行機に手を振っているんですか?」と聞いたところ以下のような答えが返ってきたということ。
「おう。あれか。あれはな、俺、もともと沖組の出身なんだよ。だから、お客様がこんな遠い沖縄まで高いお金を出して、青い海と輝く太陽を楽しみに来てくれて、ありがたいなって思うし、真っ黒に日焼けして帰っていく姿を見ると『よかったですね、来たかいがありましたね』って、思ってうれしくなる。反対に、台風や雨の日が続いてしまって、真っ白い肌のまま帰っていくお客様を見ると申し訳なくて、『ぜひもう一度、すばらしい沖縄を見に来てください』って、思う。
だから、楽しく過ごしてくださった方はもちろん、ちょっと残念な思いをした方にも、沖縄に行ってよかったねって、楽しい思い出になったねって、思ってほしくて、その気持ちを伝えたくて手を振っているんだ。」(p123)
この話に感動した後輩の方も一緒に手を振って見送るようになり、それが他の支店にも広がっていったということ。名前もついて「Good-by Wave」と呼ばれるようになったらしい。
そして、自発的に始まったため、規定やマニュアルには一切定められてなくて、手の振り方も人それぞれに違うらしい。知らんかったー。今度飛行機乗ったら見てみようかな。
■「おせっかい」ではない?
エピソードを読み進める中でふと気になったのが、それって一歩間違えれば「おせっかい」なんやないやろうか?っていうこと。
例えば、喧嘩中のカップルの仲裁に入って自分の経験を語ったり、ふられたばかりの人に対してメッセージを送ったり、結婚相手の両親に挨拶に行く人に対して話し方のレッスンをしたりといったあたり。
これらは結果としてはうまくいって、乗客の方にも感謝されてイイ話でまとまってるんやけど、もし相手の方の意にそぐわなかったらおせっかいになっちゃうんやないやろうかと思った。
そう思ってたら、以下のような一節があった。
「ANAには"おせっかい文化"というものがあります。
"おせっかい"という言葉を聞くと、いらぬお世話、余計なお世話とマイナスのイメージが強いかもしれませんが、私たちのおせっかいは、ちょっと違います。
「このくらいでいいや」と思わない、「もっと、何かできることはないだろうか」と、ちょっと踏み込んでみること、それが"ANA流おせっかい"です。
もちろん、誰かれ構わずおせっかいをしなさい、ということではありません。
放っておいてくれとサインを出している方には、いたしません。
ただ、たいていの方が声をかけられても嫌な気持ちにはならないものです」
(p149)
なるほど、あえてちょっと踏み込んでるんやなーということで納得がいった。おそらく裏側には失敗のエピソードもあるんやろうけど、無難な範囲にとどまるのではなくてちょっと踏み込んでみることの積み重ねが人を感動させるようなサービスにつながるんやなーと思った。
これはキャビンアテンダントの仕事に限らずに参考になる要素やなーと思った。
「心温まる」と題されているだけあって、素直に読むと温かい気持ちになれて良い気持ちにさせてくれる一冊やった。
ANAの飛行機に乗ったお客さんや、お客さんとキャビンアテンダントの方とのふれあいについてのエピソード集。
キャビンアテンダントの方が機上でどのように考え、行動しているのかということが分かる。特に、サービス精神、おもてなしの心というのがキーワードで、感動系の話が中心。
いわゆる「イイ話」を集めたもので、読み方によっては鼻につくようなところもあるかもしらんけど、素直に読めば素直にイイ話として読めるし明るい気持ちになれる。
著者は、ANAのチーフパーサーを務めた後、ANAのグループ会社で研修の講師をされている方。この方は茶道をやられているとのことで、おもてなしの心について茶道の精神をベースに解説されていてそれも結構面白かった。
■ドリンクの出し方
印象に残ったエピソードはいくつかあるけど、その中で特にドリンクの出し方についての話が心に残った。
まず、急いで乗り込んできてお腹が減っていたので、離陸前にテーブルを出して急いでお弁当を食べていたら、キャビンアテンダントの方から声をかけられたという話。
注意されるのかなと思ったら、「上空に参りましたら熱い日本茶をお持ちいたします」とぬるい日本茶を持ってきてくれて、その上で「離陸までにはテーブルを元の位置にお戻しください」と一声かけられたとのこと。
これは、通常のドリンクサービスで提供しているような熱いお茶を持って来ると、離陸までにすぐに飲み干すことができないので、わざわざぬるいお茶を持っていったという。単に温めるのが間に合わなかったのかなーと思っていたのでその気遣いには
もう1つ、搭乗するのがギリギリになって、走って乗り込んできた方の話。怒られるかと思いきや、係員の方は「頑張りましょう」と励ましながら荷物を1つ持って一緒に走ってくれ、乗り込んだ後も丁寧に案内される。
そして、ようやく席についたら、「お客様、お急ぎくださいましてありがとうございます。よろしければ、冷たいお水をお持ちいたしましたので、どうぞ」とすっと紙コップを渡され、ゴクゴク飲み干して一息つけ、不機嫌だった周りの乗客の人まで感心したという。
ドリンクにまつわる話は他にもあったけど、ドリンクの出し方一つとっても、出すタイミングやどういう状態で出すかといったことに心が配られているんやなーと感心した。
■泣きやまない赤ちゃん
あと、最初の方にあったエピソードで、なかなか泣きやまない赤ちゃんを乗客の60代くらいの女性の方が抱いて子守唄を歌って寝かしつけてくれたという話があった。歌を歌い始めてすぐは赤ちゃんは泣き続けていたけど、周囲の不機嫌そうな空気が和やかな空気になったという。
気がつくと赤ちゃんはすやすや眠っていて、以下のような言葉を残して席に戻っていったという。
「いいかい。こうやって自分の心臓の音を赤ちゃんに聞かせるの。胎児だった時に聞いた音だから赤ちゃんが安心するのよ。抱いている人の心が赤ちゃんに伝わるの。
だからね、こういう時は、まずゆったり自分の心を落ち着かせることが大切なのよ」(p25)
カッコイー!と思った。この話の解説で、著者の方は以下のように述べている。
「誰かが困っている、そんな時は、自分にも何か手助けできることがあるはずだ、そう考えてみませんか。
直接、手を出さなくても、間接的なことでもいいのです。
このおばあちゃんのように子守唄を歌うことはできなくても、迷惑そうな顔をしないとか、舌打ちをしないとか。
そうすることで、機内の雰囲気が悪くなることもありませんし、お母さんも追い詰められることなく、赤ちゃんに向き合うことができます。
些細なことであっても、何かしたい、そう思って実行できたら素敵です」(p26)
これはその通りやなーと思った。赤ちゃんの泣き声が迷惑で飛行機会社にクレームをつけた人の話とかが最近話題になってたけど、そういう考え方ではなくて、上のような考え方をとれるともっと良い雰囲気になるのになーと思った。
■Good-by Wave
もう一つ、整備士が手を振りながらお客さんを見送るのは実は沖縄出身で沖縄空港支店整備課で仕事をしていた整備士の方が自発的に始めたサービスだという話は印象に残った。
その方の後輩が、いつも出発する飛行機に向かって最後まで手を振っていることに気づいて、「どうしていつも出発する飛行機に手を振っているんですか?」と聞いたところ以下のような答えが返ってきたということ。
「おう。あれか。あれはな、俺、もともと沖組の出身なんだよ。だから、お客様がこんな遠い沖縄まで高いお金を出して、青い海と輝く太陽を楽しみに来てくれて、ありがたいなって思うし、真っ黒に日焼けして帰っていく姿を見ると『よかったですね、来たかいがありましたね』って、思ってうれしくなる。反対に、台風や雨の日が続いてしまって、真っ白い肌のまま帰っていくお客様を見ると申し訳なくて、『ぜひもう一度、すばらしい沖縄を見に来てください』って、思う。
だから、楽しく過ごしてくださった方はもちろん、ちょっと残念な思いをした方にも、沖縄に行ってよかったねって、楽しい思い出になったねって、思ってほしくて、その気持ちを伝えたくて手を振っているんだ。」(p123)
この話に感動した後輩の方も一緒に手を振って見送るようになり、それが他の支店にも広がっていったということ。名前もついて「Good-by Wave」と呼ばれるようになったらしい。
そして、自発的に始まったため、規定やマニュアルには一切定められてなくて、手の振り方も人それぞれに違うらしい。知らんかったー。今度飛行機乗ったら見てみようかな。
■「おせっかい」ではない?
エピソードを読み進める中でふと気になったのが、それって一歩間違えれば「おせっかい」なんやないやろうか?っていうこと。
例えば、喧嘩中のカップルの仲裁に入って自分の経験を語ったり、ふられたばかりの人に対してメッセージを送ったり、結婚相手の両親に挨拶に行く人に対して話し方のレッスンをしたりといったあたり。
これらは結果としてはうまくいって、乗客の方にも感謝されてイイ話でまとまってるんやけど、もし相手の方の意にそぐわなかったらおせっかいになっちゃうんやないやろうかと思った。
そう思ってたら、以下のような一節があった。
「ANAには"おせっかい文化"というものがあります。
"おせっかい"という言葉を聞くと、いらぬお世話、余計なお世話とマイナスのイメージが強いかもしれませんが、私たちのおせっかいは、ちょっと違います。
「このくらいでいいや」と思わない、「もっと、何かできることはないだろうか」と、ちょっと踏み込んでみること、それが"ANA流おせっかい"です。
もちろん、誰かれ構わずおせっかいをしなさい、ということではありません。
放っておいてくれとサインを出している方には、いたしません。
ただ、たいていの方が声をかけられても嫌な気持ちにはならないものです」
(p149)
なるほど、あえてちょっと踏み込んでるんやなーということで納得がいった。おそらく裏側には失敗のエピソードもあるんやろうけど、無難な範囲にとどまるのではなくてちょっと踏み込んでみることの積み重ねが人を感動させるようなサービスにつながるんやなーと思った。
これはキャビンアテンダントの仕事に限らずに参考になる要素やなーと思った。
「心温まる」と題されているだけあって、素直に読むと温かい気持ちになれて良い気持ちにさせてくれる一冊やった。
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