2013年3月2日土曜日

「学校の社会力 チカラのある子どもの育て方」を読んでゆとり教育と総合学習が目指したところを今一度考える


学校の社会力―チカラのある子どもの育て方 (朝日選書)

子どもの社会力を育てるためにどうしたらいいかというテーマについて、著者の考えとともにいくつかの学校の実践例を紹介している。

本が出版されたタイミングは2002年7月で、その前あたりに書かれていたみたいやけど、総合的な学習の時間が全国的に始まったのが2002年4月から。

このタイミングにも関連するけど、総合的な学習の時間をいかにして成功させるかということをテーマとし、成功させるための授業づくりの考え方とやり方を提案している。

前半の方では脳科学の話も踏まえて、社会性がどう育まれているかを紹介しており、後半の方では総合学習を成功させている事例が紹介されている。両方ともそれぞれに具体的な話で興味深い内容だった。

後半の事例は、小学校、中学校、高校とそれぞれ紹介されていて1つ1つが示唆に富む内容で解説もついていてより深くみていけるようになっている。


■ゆとり教育&総合学習への高い評価
著者は、2002年度から実施された新しい学習指導要領にもとづく「総合的な学習の時間」の考え方に高い評価を与えている。

「私は、ゆとり教育によって生きる力を育てるという学習指導要領のねらいを高く評価してきた。とりわけ、生きる力を育てる授業として新設された「総合的な学習の時間」を成功させなければならないと考えてきた。それゆえ「総合的な学習の時間」を実のある授業にすることで、子どもたちに「生きる力」を、すなわち私のいう「社会力」をつけることがそのまま「学力」を高めることにつながると主張してもきた」
(p254)

何かと批判を受けるゆとり教育と総合学習やけど、本書で紹介されている、文科省の答申等をふまえてその目指したところを読むと、そのねらいは良かったのではないかと感じた。

自分は世代的にはゆとり教育かその一歩手前くらいやけど、学校自体は総合学習の走りのようなことをやってたので、いわゆるゆとり的な部分はあると思う。

でもそこで得たものは大きいと思っていて、世間一般で言われるような批判的で一方的な言説に違和感を感じていたのでこの本を読んでそのあたりが少し整理できたような気がする。


■「生きる力」
上記に関連して、著者が引用している、第15期中央教育審議会の第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」を引用してみる(1996年7月にまとめられ公表されたもの)。

「我々はこれからの子供たちに必要になるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力であり、また、自らを律しつつ、他人とともに協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性であると考えた。たくましく生きるための健康や体力が不可欠であることはいうまでもない。我々は、こうした資質や能力を、変化の激しいこれからの社会を[生きる力]と称することとし、これらをバランスよくはぐくんでいくことが重要であると考えた」
(p81-82)

もう15年以上前の答申やけど、今にも通じる内容やと思う。そして、このねらい自体は良い内容やと思う。

ゆとり教育というと、単に学力が低下した元凶のように扱われて批判的にみられることが多いけど、その目指したところとかを踏まえた上で、なぜそれが活かされなかったのかとかを考えていった方が良いんやないかなーと思った。


■五ヶ瀬中等教育学校への示唆
さっきも述べたように、自分の出身校である五ヶ瀬中等教育学校では、総合的な学習の時間の前身ともなるような授業(フォレストピア学習)をやっているという特色があった。

この学習時間の取り扱い方は自分の在校当時も今の先生方も苦労されているような感じがする。

しかし、本書でも書かれていることとも通じるけど、これをどう活かせるかどうかがこれからの時代を生き抜いていく人材を教育できるかどうかに関わるような気がする。

全国的にも総合的な学習の時間の活用状況っていうのが今どうなっているのかあまり詳しくないけど、本書は今読んでも参考になるんやないかなーと思った。

しかし、本書の内容は自分の母校にとってもいろいろと示唆の多い内容やった。個々の項目でもっと詳しく取り上げてみたい内容も多いので、それは別途書いているブログ()の方でとりあげてみようと思う(というわけでAmazonで本書を購入)。



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