2013年4月17日水曜日

考えるヒント集としての「日本の問題を哲学で解決する12章」

日本の問題を哲学で解決する12章 (星海社新書)

現代の日本社会におけるいろんな問題について、哲学的な視点から考察した本。

政治、経済、教育等、様々な角度のトピックが扱われているため、1つ1つの内容はそんなに厚くないけど、今日本で話題になっていることについての「考えるためのヒント集」(p4)となることが意図されている。

複雑で賛否両論あって簡単に解決できないような問題について、「場当たり的」「表面的」に対応していては行き詰まる。そこで、「そもそも」という視点から考えようとしている。

扱われているトピックは以下の12のポイント。
  1. 民主主義
  2. 安全保障
  3. 市場経済
  4. 社会保障
  5. 原発
  6. TPP
  7. 政治制度
  8. 道州制
  9. ネット時代の政治
  10. 同性婚
  11. 裁判員制度と死刑
  12. 教育

■気になっているけどちゃんと考えられていないことを考えるためのヒント集
章ごとに結論もついているし、1つ1つの文章は読みやすい。ただ、結論については、結局著者自身の考えを示しているので、「考えるためのヒント集」というよりはやや著者の考えを記すことに寄っている気がする。

また、解決策については、結局、熟議をして徹底的に話し合いましょうとか気概とか、心がけの問題が訴えられていて、それはそれで大事やと思うけどそれだけやと厳しいんやないかなあ…とも思う。

それでも、今日本の中で、なんか話題になっているけどちゃんと自分で考えられてないよな…というような話題が多く網羅されているので、考えるきっかけにしたり、考えをまとめるのには参考になると思う。

論点の整理の仕方については、この視点って抜けているんじゃない?と思うところもあるけど、紙幅の関係上しょうがないところもあると思うし、それも含めて自分で考えていく良い素材になると思う。


■哲学的に考えるということ
哲学的に考えると言っても、弁証法によって、あるテーマについての賛成論と反対論を併記して第3の道を探るというスタイルなので、そんなにややこしい考え方ではない。というか、むしろ分かりやすい。

例えば原発を推進するか廃絶するかについて、ベースとしては、「絶対的に正しいほうを選ぶという解決法は、不可能であることをまず認識すべき」(p101)という姿勢。その上で、賛成論、反対論の両方の主張を踏まえて進むべき道を探ろうというもの。

これって書いてると当たり前に見えてくるけど、実際にいろいろ議論し出すと自分の立場に偏ってしまいがち。パラダイムを一旦外して、「そもそも」のところから考えていくということの重要性が繰り返し述べられている。


■自分で決めようとしない
1つ印象に残ったのが、自分で決めるということについて。政治やら経済やら、いろんな問題について、日本国民は自分で決めようとしないというは話(別にこれは日本国民に限らんかもしらんけど)。

ここには2つの問題があると述べられている。
  1. 自分が決めるという意識がない
  2. 決める訓練が足りない
1つ目の点については、自分で決める大切さに気づきながらも「フリーライダー」となっている現状について触れられている。「自分がわざわざ苦労して変えなくても、誰かがやってくれると考える」(p23)という姿勢。

2つ目の点については、教育の中で話し合って決めていくというような訓練をそもそもあまりやっていないということが述べられている。

これって会社での話でも通じるかもと思った。自分で決めようとしない雰囲気を感じる時ってある。ただ、それを結局意識の問題に帰着しちゃうと個人攻撃になってしまうので、訓練なり仕組みなりをやっていくのが良いのかなーと思った。

1つ1つの章の論点や結論には必ずしも賛同できなくても、考えるためのヒントとして良い一冊やと思った。

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