2013年4月5日金曜日

「赤ちゃんの不思議」と赤ちゃん学の最新動向が分かる本

赤ちゃんの不思議 (岩波新書)

最新の脳科学や認知科学の研究成果を紹介しつつ、赤ちゃん研究がどのように進んでいるのかを紹介した本(発行年月日は2011年5月)。

赤ちゃんを研究対象とする「赤ちゃん学」の研究における手法やその考え方等についても紹介されている。

赤ちゃんの教育養育環境と発達との関係についても述べられているのでそういう面からも読めるし、研究系の視点からの話もある。

研究系の話にあんまり興味がない人だと読みづらいところもあるかもやけど、そういうところにも興味があると、既存の手法がどう構築されてきたかとかその問題点はとかの話もあってなかなか興味深い。


■無力な赤ちゃん像からの変化
赤ちゃん学は、ここ20-30年くらいで目ざましい発展を遂げているらしい。

それまでは、赤ちゃんは無力な存在で、新生児は目も見えていないと考えられていたのが、今では新生児であってもいろんな能力を持つことが実証されているとのこと。

赤ちゃんは大人から一方的に何かを受け取るのではなく、大人の表情を模倣したり、社会的な関係性を理解して反応を返したりともっと動的な関係を大人と築いているということが、いろんな研究結果を参照しながら紹介されている。


■利他性の理解
面白かったのが、積木の実験。積木の動きを見せた時に赤ちゃんがどう反応するかを試したもの。

例えば、丸い積木が坂を登ろうとする。そこで三角形の積木は「親切なやつ」で丸い積木のを後ろから押し上げて登るのを手助けし、四角い積木は「意地悪なやつ」で丸い積木の邪魔をするとする。

6カ月と10カ月の赤ちゃんにこうした積木の様子を見せると、「意地悪なやつ」より「親切なやつ」に手を伸ばすことが有意に多かったらしい。

モラルとか社会性っていうのは幼年期以降の教育によるようなイメージもあったけど、もともとそういう要素を生得的に持ってるのかもなー。


■「科学的」な赤ちゃん研究
最後の方で、「科学的」であるとはということについても述べられていて、これもなかなか興味深かった。

研究結果の話は、常に反証可能なものであり、一定の方向性が示唆されるけどそれですべてが決まるというものではないということ。

最近は「脳科学」を掲げた怪しげな育児情報もあるけど、それをうのみにせずに判断していくことが大事という話。

科学自体は反証可能性を担保とするものやけど、子育てはそうではないということも述べられている。

「我が子を目の前にして、反証可能性やテスト可能性を考慮しつつ実際に「科学的」育児を行うことはできません。育児は繰り返しのきかない一回限りのイベントです」(p172)

科学的とされるものでも情報だけが独り歩きしてしまったり、今は正しいとされるものも将来は変わったりする。

例えば、この本でも紹介されていたけど、前はうつぶせで寝かせるのが良いとされていたけど今はあおむけが推奨されることが多かったり。

結局最終的に何が良いのかっていう判断は難しいけど、自分なりに情報を集めて取捨選択して、最後のところは決断をして進めていくしかないのかなと思う。

そういうことを再認識させてくれる一冊やった。

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