2012年12月4日火曜日

基本に忠実であることの難しさとその重要性を改めて認識させてくれる「ビジョナリーカンパニー3 衰退の五段階」

ビジョナリーカンパニー3 衰退の5段階

偉大な企業が衰退に向かっていくまでのプロセスを整理したもの。読んでいて楽しい本ではないけど、「良薬は口に苦し」というか、知っておくべき話ではあると思う。

自分は今は新規事業の立ち上げをやっているので、どちらかというとこのシリーズの1や2の「時代を超える生存の原則」や「飛躍の法則」の方がダイレクトに参考になった。

ただ、今読んでおいて損はない内容やったし、事業が成長してきた時にまた改めてこの「衰退の五段階」を読み返したいと思った。

内容の細かい話はすでにいろんなところでまとめられていると思うので、自分が特に気になったところだけ。

■衰退の五段階
衰退の五段階は以下のとおり。

第一段階 成功から生まれる傲慢
第ニ段階 規律なき拡大路線
第三段階 リスクと問題の否認
第四段階 一発逆転策の追及
第五段階 屈服と凡庸な企業への転落か消滅

特に印象に残ったのが、一発逆転策の追求による転落の話と、その段階においてどういう姿勢を保つべきかという話。


■一発逆転ではなく基本に忠実にやる
本書の中で、IBMを再建したルイス・ガースナーが、他の企業で再建を任された経営者と違い、最初にきらびやかなビジョンを提示する必要はないと言いきったという話が紹介されていた。

ルイス・ガースナーが公の場で述べた発言が以下のもの。

「ここでみなさんに申し上げたいのは、たったいまのIBMにもっとも必要ないもの、それがビジョンだということだ」(p149)

これだけ聞くと、「エッ!?」と思ったけど、その真意は以下のとおり。

「IBMはビジョンをもつべきではないという意味ではない。最初の優先事項はもっと基本的な活動だと語ったのである。具体的には、主要なポストに適切な人材を確実に配置すること(「当初の数週間に最優先事項にした」)、収益性を回復すること、キャッシュフローを増やすこと、そして何よりもIBMの行動のすべてで顧客本位の姿勢を回復することである(ガースナーは一歩ずつ足元を固める堅実な方法をとり、既存の強みを活かすことを基本にし、「大量の定量分析」を行った」(p149)

人材の適切な配置、収益性の快復、キャッシュフローの増加、顧客本位の姿勢、強みを活かす…

これってどれもこれも当たり前のことに聞こえるけど、やりきるのは難しい。危機に瀕している企業では一発逆転への誘惑が強くなっていて、ガースナーが言ったようなことは地味に聞こえ、本当にそれで大丈夫なのか?という疑問もあがってくる。

しかし、それを振り切って基本に忠実にやりきることが重要という話。そうしないとどんどん転落のサイクルにはまってしまう。

「外部から招聘されたにせよ、内部から昇進したにせよ、一発逆転を狙い、一つの救済策が失敗すればつぎの救済策に飛びつき、特効薬がきかなければつぎの特効薬を探し、希望がついえた後につぎの希望もついえ、そのつぎの希望もついえるというサイクルから抜け出さなければならないことをガースナーは理解していた」(p161)

このことを踏まえ、著者は次のように述べている。

「衰退の後期段階にある企業の指導者には冷静で、明晰で、焦点を絞った方法に戻る必要がある」(p163)

また、著者が紹介している次のエピソードが興味深かった。

「転落を食い止め、反転させたいのなら、すべきでないことは行わないよう、厳格な姿勢をとるべきだ。一九九〇年代初め、わたしはスタンフォード・ビジネス・スクールの創造性の授業に、海兵隊出身の起業家を招いて特別講義を行ってもらった。ベトナム戦争で何度もジャングルの戦闘を体験した人である。そのときの経験で学んだ点のうち、民間の起業家になって役立っているものがあれば、それは何かという質問がでたとき、しばし考えて、こう答えてくれた。「味方は何人かしかおらず、周囲に敵がたくさんいるとき、最善の方法は、『おまえはここからここまでを担当しろ。おまえはそこからそこまでを担当しろ。オートマチックにして撃ってはいけない。弾は一発ずつ使え』と指示することだ」
 深呼吸をする。冷静になる。考える。的を絞る。狙いを定める。弾は一発ずつ撃つ。そうしなければ、かつてオフィス用の宛名印刷機と複写機で最大手だったアドレソグラフが陥ったのと同じ惨状を、違う形で繰り返すことになる」(p164)


書かれていることはそんなに目新しいという感じのことは少なくて、どちらかというとそうやよなーっていう当たり前の話なんやけど、それだけに企業が大きくなってきた時に当たり前のことを当たり前にキープすることの難しさを感じる一冊やった。

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