日本人へ リーダー篇 (文春新書)
人を助けるすんごい仕組み――ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか
何も脈絡なくたまたま連続してこの2冊を読んだんやけど意外に共通点があって面白かったのでメモ。
「人を助けるすんごい仕組み」は東日本大震災後の復興支援に関する活動をベースにした話で、「日本人へ リーダー篇」は主にローマを中心とした歴史からの学びについての話で、別々の内容に見えて基本的にはそうなんやけど、共通するなーと思ったところがあった。
(それぞれに面白く、それぞれにまとめたいポイントや印象に残った点もあるけど、今回は2冊読んで感じたところに焦点を当てて感想を書いておきたい)
■アマがプロを越えるとき―カエサルの場合
「日本人へ リーダー篇」は、元々は雑誌の連載記事なので1つ1つの章は短めでいろんなテーマを扱ってるけど、その中にユリウス・カエサルにからめて、「アマがプロを越えるとき」というテーマについての話があった。
ポイントとしては次のところ。
「四十代に入って始めて大軍を率いる地位に就いたユリウス・カエサルが、なぜ、プルタークの『列伝』ではアレクサンダー大王と比較してとりあげられるほどの軍事のプロになれたのか」(p110)
著者は、「古代屈指の三武将としてもよい」(p112)としているアレクサンダーとハンニバルとカエサルの戦法とを比較すると、アレクサンダーやハンニバルの戦法は現代でも軍事大学の教材になるほど応用可能な方式として扱われているけど、逆に、カエサルのやり方は教材どころか戦史でも敬遠されていると述べている。
その理由は、カエサルの方式がそれまでの常識にとらわれない発想を持ち、その場その場で戦況にあわせて戦法を変えていったから。
雑誌連載時の紙幅の制約もあってか、あまり詳しいことは書かれていなかったけど、カエサルが以下のように取り組んだことが成功要因としてあげられている。
「味方敵ともにその心理を読みとり、それぞれに適応した対策を立てて戦闘に臨んだ」(p114)
■アマがプロを越えるとき―西條さんの場合
カエサルの話と西條さんの話を読んだ時に、まず、西條さんはボランティア経験がない中で日本最大級の支援組織を築き上げ、カエサルは戦場の経験が42歳で突如1万8千もの兵を統率する地位に就いてガリアで成功したことがなんとなく通じるなーと思った。
もう少し具体的にみると、2つの話が共通するポイントとして大きく次の2つがあると感じた。
常識にとらわれない
1つ目の常識にとらわれないという観点に関して具体的な例としては、例えば支援物資の送り方が分かりやすい。
従来の支援物資の送り方は以下のようなもの。
しかし、この方法だと階層が多く、輸送と仕分けの労力やコストがかかってしまう。
また、受け入れ側の自治体そのものが被災しているので動きがとれなくなり、倉庫がいっぱいになった時点で支援を断ることになり、本来の最終目的地である被災者まで届かない。
そこで、西條さんは以下のような方法を考える。
「ホームページに、聞き取ってきた必要な物資とその数を掲載し、それをツイツターにリンクして拡散し、全国の人から物資を直送してもらい、送ったという報告だけは受けるようにして、必要な個数が送られたら、その物資に線を引いて消していくのだ」(p62)
これは後知恵で見れば簡単なことのように見えるけど、あの極限状況の中で従来の方法にとらわれずにシンプルに問題の本質を見つけて、実現可能な解決策を提示し、それを実行するというのは並大抵のことではないと思う。
結果、この仕組みを作ったことによって「必要としている人に必要な物資を必要な分量、直接送ることが可能に」(p62)なり、支援物資がきちんと本来の役目を果たすことができるようになった。
すなわち、元々は行政=プロが考えていた仕組みは今回の状況ではうまく機能せず、ボランティア経験がない西條さんが考えた仕組みの方が機能したということになる。
人間心理を大事にする
2つ目の点に関しては、糸井重里さんとの対話の中での以下の言葉が良く表している。
「『人間の心』に沿っていれば、自然とうまくいきます。そうじゃないと、必ず無理が生じて続かないんです」(p177)
これは、塩野七生さんがカエサルの成功要因としてあげていたポイントとも共通していると思う。
また、西條さんが運営上の大変なことを振り返って次のように述べている。
「これだけの人間が集まり、拡大し続ける組織をまとめながら、10を超えるプロジエクトを同時並行で運営するのだから、大変じゃないわけがない。
何が一番難しいのか。
ひと言でいえば、「人間」ということになる。
もう少し言えば、「人間の、心」。
どんな組織も人間でできている。
そして人間は心を持っている。
このことに例外はない」(p222-223)
西條さんは全国各地からのボランティアのネットワークを、カエサルは数万もの大軍をとりまとめてる中で、似たようなことを考えていたんやないかなーと思った。
上記以外でもそれぞれに学びの多い二冊やった。
人を助けるすんごい仕組み――ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか
何も脈絡なくたまたま連続してこの2冊を読んだんやけど意外に共通点があって面白かったのでメモ。
「人を助けるすんごい仕組み」は東日本大震災後の復興支援に関する活動をベースにした話で、「日本人へ リーダー篇」は主にローマを中心とした歴史からの学びについての話で、別々の内容に見えて基本的にはそうなんやけど、共通するなーと思ったところがあった。
(それぞれに面白く、それぞれにまとめたいポイントや印象に残った点もあるけど、今回は2冊読んで感じたところに焦点を当てて感想を書いておきたい)
■アマがプロを越えるとき―カエサルの場合
「日本人へ リーダー篇」は、元々は雑誌の連載記事なので1つ1つの章は短めでいろんなテーマを扱ってるけど、その中にユリウス・カエサルにからめて、「アマがプロを越えるとき」というテーマについての話があった。
ポイントとしては次のところ。
「四十代に入って始めて大軍を率いる地位に就いたユリウス・カエサルが、なぜ、プルタークの『列伝』ではアレクサンダー大王と比較してとりあげられるほどの軍事のプロになれたのか」(p110)
著者は、「古代屈指の三武将としてもよい」(p112)としているアレクサンダーとハンニバルとカエサルの戦法とを比較すると、アレクサンダーやハンニバルの戦法は現代でも軍事大学の教材になるほど応用可能な方式として扱われているけど、逆に、カエサルのやり方は教材どころか戦史でも敬遠されていると述べている。
その理由は、カエサルの方式がそれまでの常識にとらわれない発想を持ち、その場その場で戦況にあわせて戦法を変えていったから。
雑誌連載時の紙幅の制約もあってか、あまり詳しいことは書かれていなかったけど、カエサルが以下のように取り組んだことが成功要因としてあげられている。
「味方敵ともにその心理を読みとり、それぞれに適応した対策を立てて戦闘に臨んだ」(p114)
■アマがプロを越えるとき―西條さんの場合
カエサルの話と西條さんの話を読んだ時に、まず、西條さんはボランティア経験がない中で日本最大級の支援組織を築き上げ、カエサルは戦場の経験が42歳で突如1万8千もの兵を統率する地位に就いてガリアで成功したことがなんとなく通じるなーと思った。
もう少し具体的にみると、2つの話が共通するポイントとして大きく次の2つがあると感じた。
- 常識にとらわれない
- 人間心理を大事にする
常識にとらわれない
1つ目の常識にとらわれないという観点に関して具体的な例としては、例えば支援物資の送り方が分かりやすい。
従来の支援物資の送り方は以下のようなもの。
- 支援する側の国や各自治体が物資を集める
- それを被災した県に送る
- 県の倉庫で仕分けして、県内の各市町村に送る
- 各市町村内の倉庫で仕分けして、各避難所に送る
- 避難所で仕分けして、それぞれの避難者(生活者) に配布する
しかし、この方法だと階層が多く、輸送と仕分けの労力やコストがかかってしまう。
また、受け入れ側の自治体そのものが被災しているので動きがとれなくなり、倉庫がいっぱいになった時点で支援を断ることになり、本来の最終目的地である被災者まで届かない。
そこで、西條さんは以下のような方法を考える。
「ホームページに、聞き取ってきた必要な物資とその数を掲載し、それをツイツターにリンクして拡散し、全国の人から物資を直送してもらい、送ったという報告だけは受けるようにして、必要な個数が送られたら、その物資に線を引いて消していくのだ」(p62)
これは後知恵で見れば簡単なことのように見えるけど、あの極限状況の中で従来の方法にとらわれずにシンプルに問題の本質を見つけて、実現可能な解決策を提示し、それを実行するというのは並大抵のことではないと思う。
結果、この仕組みを作ったことによって「必要としている人に必要な物資を必要な分量、直接送ることが可能に」(p62)なり、支援物資がきちんと本来の役目を果たすことができるようになった。
すなわち、元々は行政=プロが考えていた仕組みは今回の状況ではうまく機能せず、ボランティア経験がない西條さんが考えた仕組みの方が機能したということになる。
人間心理を大事にする
2つ目の点に関しては、糸井重里さんとの対話の中での以下の言葉が良く表している。
「『人間の心』に沿っていれば、自然とうまくいきます。そうじゃないと、必ず無理が生じて続かないんです」(p177)
これは、塩野七生さんがカエサルの成功要因としてあげていたポイントとも共通していると思う。
また、西條さんが運営上の大変なことを振り返って次のように述べている。
「これだけの人間が集まり、拡大し続ける組織をまとめながら、10を超えるプロジエクトを同時並行で運営するのだから、大変じゃないわけがない。
何が一番難しいのか。
ひと言でいえば、「人間」ということになる。
もう少し言えば、「人間の、心」。
どんな組織も人間でできている。
そして人間は心を持っている。
このことに例外はない」(p222-223)
西條さんは全国各地からのボランティアのネットワークを、カエサルは数万もの大軍をとりまとめてる中で、似たようなことを考えていたんやないかなーと思った。
上記以外でもそれぞれに学びの多い二冊やった。
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