2013年2月4日月曜日

人づきあいの難しさは「社会化した脳」の話を読むと意外と割り切れるかもしれない(割り切れないかもしらんけど)

社会化した脳

さまざまな心の病と脳の働きとの関係を研究している方が書かれた本。

「社会神経科学」という社会学と神経科学をつなぐ学問をベースに、社会生活を営む上で必要な能力と脳のどの部分の働きが関係しているのかといった話が事例や実験結果と共に紹介されている。

元々は、著者の専門である「こころの病」「社会性の病」について書こうとしたものの、今回の本では健康なこころ(脳)の話だけでも興味深いことがたくさんあったのでそちらの話が中心になったということ。

全体的には、文章が平易で、イラストもイメージが分かりやすいものが多く、1つ1つの章も短くてテンポが良いので読みやすい。


■社会なしでは生きていけない
冒頭から平家物語で島流しにあった俊寛という僧の話から始めているのが面白い。3年間の流刑の間頑張っていたものの、妻と息子がすでに他界したことを知ると自ら命を絶ったという話を引き合いにして、次のように述べている。

「このような物語からは、私たち人間にとって、ほかの人々が周りにいること、つまり私たちが「社会」の中にいることは、私たちにとって衣食住が足りていることと同じようにかけがえのないことなのだな、ということを思い知らされる」(p13)

人と人とのあいだの相互関係は、空気のように普段は見えなかったり意識しないようなものだけど、絶海の孤島に流されるような極限状態を想像すると、その大切さが分かるという話。

メインの内容では研究の専門的な話とか専門用語とか出て来るけど、こういうイメージしやすい話がところどころ紹介されていて分かりやすい内容。


■社会的な能力と脳
社会でうまくやるための能力として次のような能力が必要になってくる。これらの能力と脳の働きとの関係が本書では解説されている。
  • 周りの人がいまどう感じているかとか、いま何をしたいと思っているかという情報をうまくキャッチする
  • 集めた情報をもとに社会の中で実際に適切に振舞う

(p24-25)

脳の働きというと、脳全体が1つのコンピューターのようになって、全体的に働いているようなイメージを持つけど、実際はそうではない様子。それぞれ脳の中の異なる領域が働いているらしい。

例えば、「危険」を察知する能力は「扁桃体」という部位といった感じ。扁桃体は危険察知だけでなく、社会的な情報を解読する働きもあるということ。


■顔で信用度を判断
これに関係して面白いのが、アメリカの神経科学者のラルフ・アドルフスという人が行なった研究。さまざまな人物の顔写真を被験者に見せて、それぞれの顔が「どのくらい信用できますか?」と質問。

結果、ある程度ばらつきがあるとはいえ、この人は信用できそう、信用できないといった判断はそれなりに一致するらしい。つまり、信用される、されない顔つきがあるということ。

そこで、脳の扁桃体に損傷を受けた人にこれらの顔写真を見せると、損傷を受けてない人が信用できないと判断した顔も信用できると答えてしまうらしい。

この話の際に、外国に行った時にタクシーのドライバーがたくさん寄ってきた時に、どの人に頼むかというシーンのイメージが書かれていて、自分もインドに行った時に経験したことを思い出しながら読めて面白かった。確かに判断しづらいので結局顔つきとか話しぶりで選んじゃうよなーと。


■性格のせい?脳のせい?
こういうのをいろいろ読んでいくと、社会性がないとか、空気が読めないとか、はては暴力とか犯罪の傾向とかも脳の働きが関係している部分があるように見えてくる。

社会性の欠如が教育や環境のせいなのか、脳や遺伝子のせいなのかというのは長い議論があるらしいし本当のところは自分にはよう分からん。

ただ、人づきあいがうまくいかない時には相手の性格とか生い立ちに原因を求めるよりは、脳や遺伝子のせいだから仕方ないと割り切った方が意外とストレスたまらなかったりしてと思ったりした一冊やった。

脳のせいやからしゃーないな、みたいな。まあそれで割り切って諦めちゃってもそれはそれで良くない時もある気もするので難しいところやけど…

このへんのテーマは興味深いのでまたいろいろと読んでみようかな。

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