2013年2月11日月曜日

「聖おにいさん」好きな人は楽しめる気がする「完全教祖マニュアル」

完全教祖マニュアル (ちくま新書)

タイトルからして怪しいし、語り口も軽いけど
中身は意外に「なるほど」と思える部分も多く、結構面白かった。
語り口やテーマの扱い方が合う合わないがあるやろうとは思う。

合わない人は読めば読むだけイライラするような気もするけど(^^;)
それが気にならない人で、知的好奇心ベースで読むのであれば面白いと思う(自分はこっち)。
マンガの「聖おにいさん」が好きな人であれば楽しめる気がする。

特に、宗教を機能的にとらえるとどうなるかという視点で見ているし、
宗教の教えとかがどう人間心理に影響しているかという説明もあり、
企業を始め組織運営全般に通じる話も結構あって
普通に参考になったりもする。


■語り口
とりあえず、目次をみるだけでもどんな語り口か分かる。
大きな章立てはこんな感じ。
  1. キミも教祖になろう!
  2. 教義を作ろう
  3. 大衆に迎合しよう
  4. 信者を保持しよう
  5. 教義を進化させよう
  6. 布教しよう
  7. 困難に打ち克とう
  8. 甘い汁を吸おう
  9. 後世に名を残そう
章の中のトピックはこんな感じ。
例えば、「教義を作ろう」という章のトピックは以下。
  • 既存の宗教を焼き直そう
  • 反社会的な教えを作ろう
  • 教えを簡略化しよう
  • 現世利益をうたおう
各章末にはチェックリストまでついている(笑)
  1. 神は用意できたか?
  2. 教えは反社会的か?
  3. 社会的弱者を救えるか?
  4. インテリは抱き込んだか?
  5. イケてる哲学はできたか?
文章も冒頭からしてこんな感じ↓

「教祖は決して難しいものではありませんし、特別な才能や資格も要りません。たとえば、ベツレヘムで生まれた大工の息子も、三〇歳を過ぎてからのたった三年間の活動で、世界一有名な教祖としてサクセスしたのです!」(p7)

後の内容もこんな感じがずっと続く(笑)


■意外に基礎知識が必要?
ただ、単に軽い語り口で全部完全にふざけているわけではなく
ある程度の下調べを踏まえた上で書かれているので
わりと基礎知識がないと、出てくる事例の話が
すんなり頭に入りにくいと思う。
(お笑いのネタで元ネタを知らないネタを見た時の
 ポカーンとした感じが近いかも)

また、コラムで結構真面目なことが書かれていたりする。
そんなこんなである程度基礎知識あった方が面白いと思うので
高校世界史の教科書くらいの知識を復習するか
池上彰さんの本とかでマジメな入門知識をつけてから読むと
スパイスがきいて楽しめるかもと思った。


■不合理に見えることも実は機能的
本の内容は、新しく宗教を作る、あるいは、
宗教を運営する立場からの視点で説明されている。

著者自身もあとがきで書いているけど
そういう視点で書かれた本ってあんまりない気がするので
結構その視点だけでもユニーク。

また、新しく作るためにどういうことを考えると良いか
という体の説明をすることで、同時に、
既存の宗教の仕組みを解説している形にもなっている。

一見不合理に見えることも運営の側から見たら
結構機能的なことってあるんやなーっていう視点が得られて
そのあたりは結構面白かった。


■なぜ食物規制があるのか
例えば、なぜ食物規制があるのかという話。

これは食事という日常の中で
自分は〇〇教徒だから△△を食べられないということを
毎日毎日認識することで、自分の特殊性を実感し
信仰が強化されることにつながっているという解釈。

もちろん、これが正解かどうかは分からないけど
1つの見方としては面白かった。

著者自身もこの本で書いているのは
著者の解釈であり、そういう意味では1つの宗教です
というようなことを言っている。


■日本人の宗教アレルギー
最後に、序章の中で書かれていたある一節を紹介。
読者(これから宗教を作る、布教しようとしている人)に向けて
「キミも教祖になろう」という文脈の中で書いた内容。

「日本人の宗教アレルギーは、逆に考えると、付け入る隙でもあると言えます。というのは、彼らは宗教を頭ごなしに嫌うあまり、宗教に対して無知なのです。また、戦前の国家神道の反動で、戦後は宗教について教育で触れることがタブー視される傾向にあります。実際、学校でも高校までは宗教のことなんてほとんど教えてくれませんよね?しかし、知識がないということは、つまり、耐性がないということです。彼らは無菌室育ちで免疫がないのですから、これは狙い目というわけです。」(p21)

「日本人の無信仰者も「なんとなく霊的なもの」は感じています。ですが、彼らにはその「霊的な感じ」をどう表現すれば良いのか分かりません。宗教的知識がないために、それを語るボキャブラリーがないからです。ですから、そういった人にピンと来る言葉や概念を与えてあげれば、「ああ、オレが今まで感じてたのはそういうことだったのか!」となるわけですね。この言葉や概念の違いで、その人はキリスト教やイスラム教や仏教などに入信するわけですが、もちろん、あなたの新興宗教に入信する可能性だって十分にあるのです!」(p22)

こういうことを考えていくと、「宗教」って聞いた時に
なんとなくアヤシイと思って全く触れないようにするのではなく
やっぱある程度は親しむというか、関心を持って知っていく方が良いし、
そういう意味ではこの本も読んで悪くないっちゃないかなー
というようなことを思った一冊やった。

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