2012年10月15日月曜日

どの立場でみるかで意見が変わることを再認識した「日本経済の奇妙な常識」

日本経済の奇妙な常識 (講談社現代新書)

著者の問題意識としては

「震災や福島原発危機が発生する前から、すでに日本経済が大きな危機に陥っていたことを忘れてはなりません。過去からの危機の構造を正しく理解し、それに対処することをきちんと考えてから、震災復興を上乗せして論じるべき」(p10)

というもの。

具体的には、以下のような点について著者の見方からの説明をしている。

  • アメリカ国債が格下げされたにかかわらず金利が下降している理由
  • 資源価格が高騰しているのに日本はデフレのままである理由
  • 円高円高と言われているが実効レートでみても本当に円高なのか
説明の内容を端的にまとめると、アメリカの住宅バブルを増幅させたのは日本政府と日本銀行で、それがめぐりめぐって日本のデフレや所得格差拡大につながっているという話。

日銀の金融緩和(量的緩和)、日本政府の円売り・ドル買いと共にFRBの金融引締の足を引っ張ったという主張。

実効レートで見ると円安だったにも関わらず、円高だと言ってやりすぎの介入

海外での金融投機を増幅

住宅バブルを大きく成長させ、バブル崩壊のインパクトを強める

また、日本の金融緩和によって、円を低利で借りて他の金融資産で運用する取引にお金が流入し、アメリカ国債の下支え。

ただし、アメリカ国債への流入には限界がある。

アメリカ国債への行き場を失った投機マネーが資源に流入
「デフレ対策として日本政府や日本銀行がおこなった経済政策が副産物として育ててしまったグローバル投機マネーが、アメリカ国債の発行規模の変化に影響されて、国際的な資源価格を高騰させた」(p53-54)
…日本の物価が下がる一方で、国際的な資源価格が高騰したからくり

「リーマンショックによって起きた深刻な世界不況の責任の一端は、日本政府と日本銀行にもあったのです」(p44)

そして資源価格高騰は日本にインフレをもたらすどころか賃金デフレをもたらす。

資源価格の高騰

中小企業は価格に転化できず

コスト上昇分は労働者の賃金カットで吸収

幅広い年齢層での所得格差を拡大

説明の内容自体は分かりやすいし面白いけど、経済系の話はいろんな話があって、何が本当か分からんから鵜呑みにはできん。

その分自分なりに考えることが大事なんやけど、こういうのを読むともうちょっと大学の時に経済、特に財政や金融とかの勉強をしっかりやっときゃ良かったなーと思う。まあ悔やんでも変わるもんでもないので、今からでも少しずつ勉強せんとやけど。

あと、円高はいいとか悪いとかっていう話はあるけど、マスメディアの報道はいい加減っていう話は頷ける。

過去には「円高が望ましい」「円安はよくない」という報道がテレビや新聞でもあったけど、今は「円高は日本の製造業にダメージを与えるから阻止すべきだ」みたいな話をよく聞く。

「どの立場でみるかで意見が変わる」(p205)というのはそのとおりだと思うので、ポジショントークを踏まえた上でとらえんとやなーということを感じた一冊やった。

あと、豆知識的なところとして、1871年に日本で円という通貨が誕生した時の最初の対米ドル円相場は1ドル=1円やったっていうのは驚きやった。データ自体は前に見たことあったと思うけどすっかり忘れてたか元々知らんかったか。そうやったんやなー。

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