2012年10月30日火曜日

「幕末維新に学ぶ現在」からの現在の政治家への愛のあるメッセージ

幕末維新に学ぶ現在〈2〉

山内昌之「幕末維新に学ぶ現在〈2〉」読了。3から読んで2→1とさかのぼって読んでる。3に比べると幕府側の人が多い印象。

ちなみに3巻の感想はこちら↓
「幕末維新に学ぶ現在」から歴史の学び方・活かし方を学ぶ

幕末維新の人物像から現在に通じる学びを得るという視点でたくさんの人物を紹介していて現代の政治家に対してもメッセージを送っている。

例えば、鳩山由紀夫さんが首相だった時に幕末のペリー来航時の老中、阿部正弘を参照。

「阿部は、徳川譜代の閣老として祖法の鎖国にこだわる立場でありながら、列強の力と世界情勢を判断して開国に舵を切らざるをえないジレンマに置かれた。それでいて、前水戸藩主の徳川斉昭のように極論を繰り返す撰夷派と政治的妥協を図るために、八方美人になった面には幾分かの同情を禁じえない。」(p11)

八方美人、弱気な政治姿勢と見られがちであり、政敵から「瓢箪鯰」と仇名されたが、海外列強からのプレッシャーから迫る危機を挙国一致体制で乗り切ろうとした。外様と譜代とを問わず大名や、身分の高下を超えて幕臣らに良策を諮問したとのこと。

山内さんも次のように述べている。

「この「瓢箪鯰」にはしたたかな所も多々あり、交渉術に冴えを発し、人心収攬にもたけていたことは否定できない。
「調整の名人」という異名は、政治家として決して悪い評価ではない。」(p12)

そして、こういうメッセージを鳩山さんに対して送っている。
「瓢箪鯰ならぬ「宇宙人」にも、せめてリーダーとして調整の名人になるように、阿部から政治とは何かを学ぶことを切に望みたいものである。」(p12)

単に幕末維新期の人は偉かったで終わりではなく、何を学び取れるかという視点で一貫しているので、批判にも愛があるなーという感じがする。

また、ちょうど震災後に出版されたということもあって、特に以下のような想いが強く述べられている。

「「震災後」まもなく小著を出すことになったことに複雑な思いがする。せめて小著が、読者諸賢が幕末維新の試練の数々から「震災後」の日本のヴィジョンを大局的に判断し、「震災後日本」 の行方を戦略的に考察するために、細部にとらわれず国家の将来を見据える素材を得る手がかりの一端になればという願いで一杯である。間違っても現代の為政者は、竹中丹後守重囲がのんべんだらりと押し出していき、鳥羽伏見の戦いで負けたような緊張感の欠如を繰り返してはならない。」(p213)

この想いを感じ取れる一冊やった。

0 件のコメント:

コメントを投稿