2012年11月24日土曜日

「承認欲求」を得るための知恵としての「京都モデル」「農村モデル」


承認欲求―「認められたい」をどう活かすか?

日本人が承認について抱いている期待や願望について説明し、そこを踏まえた上で認められるためにはどう考えて行動していけば良いかということについて述べた本。

特に、日本の会社においてはなかなか承認される機会がないので、社員が積極的に承認される職場づくりをどう進めていけばよいか提言。


■日本や日本人についての承認に対する逆説
まず最初に、逆説的に次のようなポイントを述べている。

  • 日本人はみんな認められることを強く望んでいる
    ←認められたいと思っていても口に出さない(出せない)
  • 出る杭を打つ社会だから、逆に認められやすい

著者は、経済学などで、人間は「経済人」として規定されるけど、「承認人」というべきではないかという仮説を述べている。

お金や自己実現よりも承認を求めているのではないかという話。そして、日本人はとりわけそれが強いのではないかと述べている。

「日本人、とりわけ組織の中で働く人の多くは「経済人」や「自己実現人」の仮面をかぶっていても、じつは他人からの承認を求め、承認欲求に強く動機づけられていることがわかる。日本人こそ、世界でも指折りの「承認人」なのである」(p27)

日本人が特に強い理由っていうのがイマイチ分からんけど、確かにでも経済人仮説っていうものだけでは説明できんことはいっぱいあると思う。


■表の承認と裏の承認
著者が掲げるもう1つのキーワードとして、表の承認と裏の承認というものがある。

「日本の組織や社会の特徴として、人々の能力や業績を称讃するへ表の承認)より、和や序列を大切にし、ミスをしないことをよしとするへ裏の承認)が優先される」(p14)

そして、この裏の承認のモードから表の承認のモードに切り替えていくべきだと述べている。具体的には以下のような施策を提案している。

表モードに切り替えるための施策


  • 個人を表に出す文化の創造
     個人の業績と名前を表に出すこと
     仕事ぶりや仕事のプロセスの公開
     認め合い、はめ合う文化を育てること
  • 失敗を責めない文化の創造
  • 自己決定する文化の創造

(p133)

このあたりはよく言われる話やと思うけど、次の「京都モデル」「農村モデル」という話は一つの見方として面白かった。



■「京都モデル」「農村モデル」
承認を得るためにどうしていけばよいかということを考えるのに参考になるのが「京都モデル」「農村モデル」という仮説。

京都からは、今や大企業となったベンチャー企業が数多く生まれていたり、有名や芸術家や学者なども育っている。

これはどういうことかというと、保守的だからこそ異端が出やすい。保守的な風土で既存の序列が重視されるから、新しい企業は既存の企業と異なる領域に進出する=「棲み分け」をするという主張。

もう1つは「庶民的個人主義」というキーワードも挙げている。これは、自分の利害に直接関係することは強く干渉するが、利害に関係ないことはあまり関与しないという話。

これによって、「出すぎた杭は引き抜かれる」(p192)。杭が出るまではある程度引っ張られてしまうけど、直接利害と関与しない方向で突き抜けてしまうと逆に追い風が吹くという話。

また、農村から総理大臣などの大物が生まれてくるのも似たようなメカニズムによるという話。


■承認されるための戦略
以上のようなことを踏まえつつ、こうした風土の中で承認されるためにはどういうことをやっていけば良いかもまとめている。

承認されるための戦略①-農村モデル

  • 大義を掲げる
  • 周囲の人に個人的利益をもたらす
  • 横や斜めから支援を得る
  • 「出る杭」待望論に乗る

(p207)

承認されるための戦略②-京都モデル

  • 人格的序列を崩さない
  • 他人との競合を避ける
  • 目的、ルート、場所、売り、時間幅をずらす
  • 一点突破を図る
  • パートナーを獲得する
  • 組織の力を借りる
  • 対抗勢力をめざす

(p225)

和を重んじる日本の風土自体がめんどくさいところもあると思うけど、物事はなんでも良し悪しあるし、その中でうまくやっていくための知恵として参考になるポイントがあるなーと思った一冊やった。


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