2012年11月1日木曜日

ゲーム開発者によるノーベル平和賞の受賞が実現するんじゃないかと思わせてくれる「幸せな未来は「ゲーム」が創る」

幸せな未来は「ゲーム」が創る

ゲームには世界を変える力がある、というか、すでに世界を変えつつあるということを感じさせてくれる一冊。

著者は個人的なミッションとして
「あと25年以内にゲーム開発者によるノーベル平和賞の受賞を見届ける」(p25)
と掲げているけど、本当に実現するんじゃないかと思わせられる。

著者の問題意識としては、これだけ巨大な産業に発展し、多くの人が時間を費やしているゲームに対して、単に中毒性があって現実逃避の場になっているということで眉をひそめて見るだけでは何かを見過ごしているのではないかという考え。

「世代を越えた世界中の人々がこれほど長時間ゲーム世界で過ごしているという事実は、何か重要なことの兆しで、早急に認識すべき真実を表しているのではないか」(p18)というもの。


■ゲームには世界を変える力がある
著者の視点は以下のような一節にも表れている。

「ゲームは私たちの今日の生活をよりよくするだけではありません。未来のために私たちが建設的な遺産を築くのを手助けすることもできるのです。」(p308)

「ゲームは新しい市民インフラや社会インフラを築く手段であり、協調的取り組みのための足場です。そして、私たちは世界のどんな国のどんなコミュニティでも、私たちの望む変化を実現するためのその取り組みを実行することができます。
ゲームは私たちが力を合わせてこれまでよりはるかに多くのことを達成する手助けをしてくれるのです。」(p493)

上記のように、協力して何かを成し遂げることの他に、何かに挑戦する姿勢を身につけさせてくれるということも述べられている。

「ゲームは私たちが自発的に越えたくなる障壁に挑ませることで、私たち個人が持つ力をよりよい方向に用いるための助けとなってくれる。」(p41)

「あらゆる良質なゲームプレイは、やりがいのある仕事なのです。それは楽しくて自分のために選んでやるハードな仕事です。自分がやりたいと思う仕事に励むことは、心を幸福にするための準備なのです。」(p51)


■豊富な実例
具体的な例も豊富に挙げられとる。

イギリスの地元議員の経費を調べよう(Investigate Your MP's Expenses)
短時間で議員の経費を集団で無料で調べる
→調査ジャーナリズムのコストを引き下げる
民主的改革のプロセスをスピードアップ

AEDの地図作成ゲーム
自分がいつもいる建物にあるのに目を留めて気づいていなかった人が気付くように

「トム・Hは除細動器を地図に載せ、命を救う手助けをした」と記載され、やりがいを感じる

テストを受ける世界中の子どもに応援メッセージを送るゲーム
地球の反対側にいる子供にメッセージ
「送信ボタンをクリックしたとき、私はインドの生徒が私のアドバイスを受けとっている姿を思い描きました。そのとき、こういう機会がなければ出会ったり話かけたりする可能性はほとんどなかった他の人間に、自分が意味のある形でつながっていると感じました。」(p361)

ロストジュールズ
節電ゲーム
どれだけ節電できたかがゲーム形式で楽しく分かる

チョアウォーズ
家事を大げさな冒険的ミッションのようにとらえて楽しくやる

子供が自発的に楽しんで家事をやるように

プラスワンミードットコム
現実生活でレベルアップする
例えば、プレゼンした時などにプレゼン経験値が1上がったみたいな感じ

ジェットセット
手荷物検査というつまらないものをゲームにして面白くする
「それをプレイするとき、プレイヤーは自分の生活の嫌いな部分を単にやり過ごしているだけではない」(p217)
「今という瞬間に能動的に参加しており、その空港にいる間しかプレイできないゲームミッションに取り組むことで、自分の位置をフルに活かしているのです。」(p217)


こうしたゲームを通じて、個々人が得られるものは少なくなく、社会を変える力があるのではないかという視点が語られている。



■楽しい失敗
中でも特に印象に残ったのが、ゲーマー達は失敗をおそれない、失敗しても楽観的でいられるという話。ゲーマーたちはプレイ時間の80%を失敗に費やしている、それでもゲームが大好き。

それは、ゲームが失敗を楽しく表現することが大きい。「スーパーモンキーボール」というゲームの例があげられていたけど、失敗した時も猿がコミカルな動きをすることで失敗に伴うネガティブな感情を起きないようにしている。

そして、これはゲームの中にとどまらず実生活にも応用できると著者は述べている。

「失敗したときにもしつこく楽観的でいられるようになることは、ゲームで身につけて実生活に応用できる大切な精神的強さです。」(p103)

さらに、何度壮大な失敗(エピックフェイル)を重ねても、壮大な勝利(エピックウィン)を得るためにトライし続ける。

「ゲームコミュニティにはエピックウィンがあふれていますが、その理由はふたつあります。第一に、途方もない挑戦や低い成功の見込みや大きな不確実性を前にしても、ゲーマーはきわめて楽観的に考えます。成功する見込みが低くても、少なくとも可能性はゼロではないと、100パーセント自信を持っています。ですから、ゲーマーがエピックウィンを達成しようとするのは、決して無意味なことでも勝ち目のない朝鮮でもないのです。第二に、ゲーマーは失敗を恐れません。よいゲームで失敗するのは、少なくとも楽しくおもしろいことです。それに加えて、勉強になることもありますし、力を与えてくれることさえあります。」(p352)

「プロジェクトがエピックウィンではなくエピックフェイル(壮大な失敗)の実例になる可能性はかなり高いのです。でも、よいゲーマーなら誰でも知っていることですが、失敗はそこから学ぶ人には報酬と力の両方を与えてくれます。とうてい不可能だと思っていたことを達成する自分の潜在力を試してみることで、私たちは本当にそれを達成できるレベルに近づくことができます。よく知られた格言にあるように、「ばったり倒れたとしても、前のめりに倒れるかぎり前進している」のです。

 エピックウィンは、現実世界の大義と結びついたとき、私たちがそれまで気づいていなかった自分の能力、共通の利益に貢献する能力に気づく手助けをしてくれます。普通の人間が空き時間にできるのはせいぜいこれくらいだろうという他の人々の予想を、私たちがくつがえす手助けをしてくれます。そして、互いに助け合う能力をこれほど十分備えた、これほど大勢のボランティアを、これほど効果的に集められるようになる前は、ばかげていると―不可能だと―思えたであろう壮大な目標を設定する手助けをしてくれるのです。」(p376-377)

「ばったり倒れたとしても、前のめりに倒れるかぎり前進している」と、こういう姿勢を身につけられるだけでも、かなり大きいなーと思った。



本の原題と「はじめに」のタイトルが「リアリティ・イズ・ブロークン」で、現実はもうダメだからゲームに走っている?とうニュアンスから始まるけど、最後の「おわりに」のタイトルは「リアリティ・イズ・ベター」ということで、ゲームはゲームで閉じたり現実逃避の場にするのではなくて、ゲームの力によって現実をより良いものにしていこうという著者の姿勢が見える。

中高生くらいの時に読むとより感銘を受けそうやなー。ゲーム好きの中高生とかその親とかにオススメかも。


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