2012年11月25日日曜日

「日本電産 永守イズムの挑戦」に学ぶ当たり前のことを当たり前にやることの重要性

日本電産 永守イズムの挑戦 (日経ビジネス人文庫)

M&Aをした相手先企業の事業を再生しながら成長を続けている日本電産についての本。

日経系の新聞に掲載された記事を参考にしつつ、著者の取材メモや各種資料、取材のインタビュー等の情報をもとに書き下ろしている。

第1部では、三協精機という会社のM&Aの過程をドキュメントタッチで書いていて、テレビのドキュメント番組とか映画を見ているような感じ。

日本電産が資本参加して1年半で営業利益、経常利益、純利益も過去最高を更新したその過程を結構詳しく追っている。当事者にその時々の話をインタビューしていてケーススタディーとしても参考になる。

第2部は「永守イズムの源流」として、日本電産創立者の永守さんの半生の概要を紹介し、お母さんの子育てのポリシーなども紹介していてそれも面白い。

第3部は「永守流経営のエキス」と題して経営の特徴等について紹介していて、個人的にはこの章が一番おもしろかった。

第4部は「素顔の永守重信」というタイトルのインタビュー。


■日本電産の特徴
日本電産という会社の特徴については、著者がまえがきで次のように要約している。

「日本電産という会社はハードワークで有名な会社であり、ハードワークについていけない人たちは脱落していく。「怠け者は去れ」「良貨は悪貨を駆逐する」という強烈な会社である。しかし、一生懸命働いた人は報われる仕組みがあるし、二〇一〇年には業界トップの給与水準にするとも明言している。果敢な挑戦の過程での失敗は、成功への糧として、復活できる風土もあるし、事実、日本電産の経営陣のなかには過去に何度となく失敗した人がいくらでもいる」(p6)

また、永守さんが昔から言っているという言葉も紹介している。

「一人の天才よりも百人の協調できるガンバリズムを持った凡才によって会社は支えられなければならない」(p6)


■当たり前のことを当たり前にやる
この言葉にも象徴されているけど、再建の過程でも出てくる話は、当たり前のことをいかにきっちり当たり前にやり遂げるかということ。

それは以下のような言葉にもあらわれている。

「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」(p145)

「誰でもできる簡単なことで差をつける」(p164)

「目の前に落ちている小さな部品を見つけてサッと拾おうとするか、見過ごしてしまうか、はたまた安い部品だからと踏みつけてしまうか。ちょっとした違いが各人の仕事の成果を、さらにいうならば、組織の明暗を大きく分けることになる」(p333)


■中途半端はいけない
また、永守さんが三協精機に着任した時の訓示のメッセージが印象に残った。

「私は一人の天才を求めていません。一人の百歩よりも百人の一歩というのが私の経営の方針です。みんなの力を結集してこの会社をいい会社に変えていくというのが経営手法です。一番の問題は中途半端です。やるでもなし、辞めるでもなし。これは一番いけません。やるならきっちりやる、やらないなら辞める。『わしはほかの会社からスカウトが来ているんや。三協精機より三割いい給料出す』。そんなにいいところがあるんだったらぜひ行ってください。中途半端はいけない。残るなら、徹底的にやってもらう。いやなら辞める。しかし、どうもよくわからんと、(そういう姿勢で)会社にいるんだったら、今申し上げたように一年間だけだまされたつもりで行動していただきたい。再建は時間をかければ疲れます。私も疲れますし皆さんも疲れます。短期でやりたい。一年が勝負です。やるからには全力を挙げてやる。私も全力でやります。皆さんも真剣にやってほしい。もたもたしているともう時間がありません。実行するのみです。それを、高い壇上でありますが、お願いしておきます」(p95)

ホント、中途半端だと会社にとっても本人にとっても良いことないよなー。腹をくくってしっかりやることをやるか、そうでなければ環境なり仕事なり変えていかないかんよなー…


■能力差は五倍、意識は百倍の差がある
人の採用についてもかなりユニークなエピソードがある。例えば、奥さんのお父さん(義父)の方から、戦争の時には学校の成績は関係ない、活躍したのは、早飯、早便、早風呂の奴だったという話を聞いて、「早飯試験」を実施。

弁当付きの入社試験と銘打って人を集め、パサパサのご飯とかスルメとか日干しの魚とか食べにくい食材の弁当をわざわざ作ってもらい、「十五分以内に食べられた学生を採用する」と決めて試験。

そして、この手口は一度使ったらもうバレてしまって使えないので、翌年以降は便所掃除試験、試験会場先着順、大声試験、留年組専門採用試験などをやったということ(笑)

何でこんなことをやっているかというと、「成績以外の何か」を重視しているから。学校の試験ができる人間よりも、別の何か、人間としての総合力や感性、特に意欲を重視している。

これと関連して、人の能力に関して次のような言葉も紹介されていて印象に残った。

「私の考え方では、人間の能力の差は五倍しかない。人間の知能とか経験とか知識なんてものは、そこそこの会社の社員であれば五倍もないのです。普通は二倍から三倍ですわ。頭がええとかね、そんなことはもう大して差がない。しかし、社員の意識といいますか、やる気、『それやろう』とか、『今日は絶対売るぞ』とか、『絶対に悪い品物出さんぞ』とか、そういう意識は百倍の差がある。実際は百倍以上ですな、おそらく。千倍ぐらいあるかもしれません。したがって頭のいい人を採るよりも、意識の高い人を採ったほうがうんと会社が良くなります」(p298)

ZOHOでもちょっと通じるような発想で採用しているのでこのあたりは興味深かった。



他にもいろいろと面白い点や参考になる点が詰まっていて一気に読んだ。仕事や会社について考える際に、しっかりやっていきたいと思うのであれば一度読んでおくと良い一冊やないかなーと思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿