2012年11月26日月曜日

社会セクターへの飛躍の法則の適用について述べられている「ビジョナリーカンパニー【特別編】」


ビジョナリーカンパニー【特別編】

「ビジョナリー・カンパニー2―飛躍の法則」の改訂版で補論として出すことも検討されていた内容が別冊になったもの。これだけのために同じ本を買い直してもらうのは…という著者の配慮で別冊で出したということ。

どういう意図で書かれているかというと、「ビジョナリー・カンパニー2」自体は企業に関する内容がメインやったけど、その読者の30-50%は企業以外(具体的には教育、医療、宗教、福祉、非営利団体、警察、政府機関、軍の関係者)の人やったので、そういった社会セクターでこの法則が適用できるかどうかを検討したもの。

検討の結果、この飛躍の法則は企業だけでなく他のところにも適用できる。しかも、著者が予想していた以上にうまく適用できることが分かったということ。一方、企業の場合との違いもある。

具体的な違いとしては、飛躍の法則で扱われたものと対応させて以下のような点があげられている。
  1. 「偉大さ」の定義 - 経営指標が使えないなかで、偉大さを判断する
  2. 第五水準のリーダーシップ ー 分散型組織構造で成功を収める
  3. 最初に人を選ぶ - 社会セクターの制約のなかで適切な人をバスに乗せる
  4. 針鼠の概念 - 利益動機のないなかで、経済的原動力を見直す
  5. 弾み車を回す - ブランドを構築して勢いをつける
(p13)

例えば、企業であれば財務状況や株式の実績等で指標化できるが、企業以外の社会的セクターの場合、経営指標は必ずしも当てはまらない。また、数量的な指標を設定するのも難しい場合がある。

じゃあどうやって考えれば良いかというと、数量的な指標は必ずしも重要ではない。量的、質的な事実をしっかりと集めて成果を確認していけるようにして、より偉大な方向に進めているかどうかを把握できるようにしていけば良いという考えが示されている。

同じように、「最初に人を選ぶ」という観点では、企業に比べて人を入れ替えたりしづらいのでより注意が必要とか、「弾み車を回す」という観点では、社会的セクターの弾み車になるのはブランドであるといったことも述べられている。

その中で、特に印象に残ったのがリーダシップの話。

企業セクターと社会セクターではリーダーシップの発揮の仕方に違いがあり、企業経営者が社会セクターに移った際に失敗する場合があると述べられている。

例えば大学の学部長に転身した企業経営者が経営手法を駆使したが教授達に反発された例等が紹介されている。

そして、リーダーシップについては企業に模範を求められることが多いが、実は、企業セクターより社会セクターの方がリーダーシップの模範となるのではないかと述べられている。

「社会セクターの組織は企業セクターにリーダーシップの模範を求め、人材を求めるようになっているが、実際には社会セクターの方が企業セクターより、リーダーシップの模範例が多いのではないかと思えるのである」(p35)

これはどういうことかと言うと、
「リーダーシップの実践は力の行使と同じではない」(p35)
ということが理由として挙げられている。

力で脅したり、力を背景にして本人の意志に反して行動をとらせてもそれはリーダーシップの発揮とは言えないと。

逆に、自発的に行動を引き出すことが重要であり、それは経済的な動機付けが適用しづらい。また、社会セクターは分権型の組織で中央集権的に進めづらく合意を得ながら進める必要があることも多いため、学べる部分が多いのではないかということ。

このあたりの視点は面白いなーと思ったと同時に、飛躍の法則の復習にもなった一冊やった。

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